きらめく松坂慶子がそこにいた
2020年07月16日 12:45
芸能
![きらめく松坂慶子がそこにいた](/entertainment/news/2020/07/16/jpeg/20200716s00041000251000p_view.jpg)
銀四郎との熱いラブシーンは見どころのひとつ。肌をさらすことをいとわない大胆な動きに女優としての強い覚悟を感じる。銀四郎の子を身ごもりながら平田満の「ヤス」と結婚して迎える夜のシーンもいい。「銀ちゃんって、どんな顔してたっけ?女って薄情ね」と告げてヤスに身を寄せる表情がなんとも艶っぽい。
「上海バンスキング」は短い髪形で戦前の大女優の雰囲気。ダンサーとして歌って踊るシーンは、79年に松坂がバニーガールの衣装で歌った「愛の水中花」をほうふつさせて楽しい。こんな華やかで魅惑的な松坂を近頃はすっかり忘れていた。
思い返せば、ずいぶんと長い間、その出演作を見てきた。最初の記憶は68年の特撮ドラマ「ウルトラセブン」の少女役。あらためて今、見てみると、まだ幼さなく、ふくよかな顔に、やがてきりりとした美女に成長する片りんがうかがえる。73年の大河ドラマ「国盗り物語」の濃姫は愛らしく、81年の映画「男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎」のマドンナには哀切があった。
本人を取材したこともある。2018年のNHK大河ドラマ「西郷どん」で西郷隆盛の母を演じていた時だ。この大河には風間杜夫と平田満も、それぞれ西郷の父、大久保利通の父の役で出演した。
風間と平田が相撲を取り、松坂がそれを見守るシーンで、34年ぶりに3人で共演。松坂は「温かい気持ちになった」と笑顔を見せ、風間は「松坂さんは相変わらずおっとりしていた」、平田は「楽しい時間だった」と話した。この時の松坂は風間の言う通り、おっとりしていたが、若い頃から実はそういう性格の人だったのだと知って興味深かった。
役者は今が大事だとは思うが、昔も大切。古い作品を見直せば、忘れていた魅力を思い出し、再評価することができる。「蒲田行進曲」「上海バンスキング」を見て、松坂がかけがえのない女優であることを痛感した。
もうひとつ思い出したことがあった。松坂は高校の先輩。年齢が離れているので学校で見かけたことはないが、母校の自慢だった。もちろん、それは今でも変わらない。
◆牧 元一(まき・もとかず)1963年、東京生まれ。編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴約30年。現在は主にテレビやラジオを担当。