三谷幸喜氏 舞台「大地」に込めた俳優への愛「助けられてきたから、ここまで来れた」「恩返しをしなきゃ」
2020年07月25日 08:00
芸能
![三谷幸喜氏 舞台「大地」に込めた俳優への愛「助けられてきたから、ここまで来れた」「恩返しをしなきゃ」](/entertainment/news/2020/07/25/jpeg/20200724s00041000499000p_view.jpg)
とある共産主義国家。反政府主義のレッテルを貼られた俳優たちだけが収容された施設があった。強制的に集められた彼らは、政府の監視の下、広大な荒地を耕し、農場を作り、家畜の世話をした。過酷な生活の中、何より彼らを苦しめたのは「演じる」行為を禁じられたことだった…。
大泉洋(47)山本耕史(43)竜星涼(27)栗原英雄(55)藤井隆(48)濱田龍臣(19)小澤雄太(34)まりゑ(35)相島一之(58)浅野和之(66)辻萬長(76=「辻」は一点しんにょう)と豪華キャストが顔を揃えた群像劇。俳優なのに、演じられない。初稿は昨年執筆していたが、コロナ禍にある今を予見したような設定。不可思議な生き物“俳優”とは何なのか。俳優への愛を込めた「三谷流俳優論」が笑いとともに展開される。
脚本・演出に3密を避ける工夫を凝らし、より豊かな演劇表現に挑む「Social Distancing Version」と銘打った。ステージ上のセットは俳優たちが収容され、生活を送るバラックの1シチュエーション。これが9分割。8つのベットが置かれ、大泉は下手(前列左)、山本は中央など、個々の“定位置”における演技も多くあり、演者間の距離が十分に保たれている。
三谷氏がミステリーの女王アガサ・クリスティーの名作を脚色するドラマ第2弾で、2018年4月に放送されたフジテレビ「黒井戸殺し」の際、インタビューの機会に恵まれた。
“創作の泉”はどこから湧き出るのか、アイデアの源について尋ねると「僕の中で何か人に訴えたいテーマとか、何か世の中を変えたい思いといったものは全くないし、そういう思いから物語を作ったことはありません。それはもう、ひとえに俳優さんとの出会い。今回の『黒井戸殺し』で言うと、野村萬斎さんですよね。萬斎さんと『オリエント急行殺人事件』(15年1月放送)をやらせていただいて、この人のドラマがもっと見たいという思いから『黒井戸殺し』も出発しましたから」
そう語った三谷氏が俳優について書いた今作のキーワードの1つになったのが「明日、世界が滅ぶとしたら…」。「明日、世界が滅ぶとしたら…」俳優は一体、何をするのか。コロナ禍にある現在が重なり「明日、世界が滅ぶとしても、三谷幸喜は書き続ける」――。「『大地』という作品は、そんな決意表明にも受け取れた」と水を向けると、三谷氏は「明日、世界が滅ぶんだったら、僕は書かないですね」と笑った。
「上演してナンボだと思いますから。例えば1カ月後に地球が滅ぶという情報が入ってきたら、1カ月かけて芝居を作って、地球最後の日に上演するということはあるかもしれませんけれども。自粛期間中の俳優さんのモチベーションや、彼らが一体、何をしているんだろうか?と考えたんです。やっぱり、俳優の皆さんは先のことを見据えているんですよね。これ(自粛)が永遠に続くわけはない、と。いつか演劇が再開して、ステージに立つ時のため、ちゃんと身体を作っておく。そういう意気込みの俳優さんたちを間近に見たので、その思いを『明日、世界が滅ぶとしたら…』の台詞に託した、ということはあります。その台詞は、最後に付け加えました」
「やっぱり俳優さんって、待つのが仕事なので。たとえ今、仕事がなくても、オファーがあった時はいつでもスッと役に入れるような状態を保っていなければならない。だからこそ僕ら側は、そうやって待ってくれている俳優さんたちのために活躍の場を用意しないといけない、という思いは常々あります。たぶん僕みたいな人間は、俳優さんがいなかったら(脚)本を書けない。俳優の皆さんに助けられてきたから、ここまで来れたと思います。だから、俳優さんたちに恩返しをしなきゃいけないと、僕は常々思っているんです」
◆「大地」大阪公演<8月12日(水)~8月23日(日)>チケット一般発売開始日:8月2日(日)
◆イープラス「Streaming+」ライブ配信日時(税込み3000円=各公演、公演当日の開演時間まで購入可能)7月25日(土)12:00公演、7月25日(土)17:00公演、7月26日(日)12:00公演、8月1日(土)12:00公演、8月1日(土)17:00公演、8月2日(日)12:00公演