大河ファン松村邦洋 「麒麟がくる」見どころは「さわやか光秀を信長がどう怒らせるか」
2020年08月13日 12:30
芸能
時代劇好きの祖父と一緒に大河を見始めたのは小学生の頃。記憶に残る最初の作品は、平将門(加藤剛さん)が主役の「風と雲と虹と」(1976年)だという。
「それまで『水戸黄門』や『遠山の金さん』を見ていたから、祖父に『どっちがいい人で、どっちが悪い人?』と聞いたら、祖父は『いいも悪いもない。勝った方が負けた方を裁くんだ』と答えた。それが現実なのかと思った。悪い人でも勝てば負けた人を裁く。歴史とはそういうものだと思う」
織田信長や豊臣秀吉の視点では明智光秀の本能寺の変は悪事。だが、光秀の視点ならば、謀反を起こすべき理由や事情がある。それは単純に正義と悪という分け方では片づけられない。今回の作品では今後、その部分が丹念に描かれることになるだろう。
「光秀を演じる長谷川博己さんは、萬平さんを演じた連続テレビ小説『まんぷく』(2018年)も良かった。長谷川さんの光秀は、さわやかで、しょうゆ顔で、格好いい。こういう人物を、信長がどうやって怒らせるんだろうと思う。光秀はパワハラを受けた憎しみで信長を討ったとされるけれど、今までにない説で本能寺の変を起こすのだったら面白い」
そこが今後の見どころになる。そして、光秀に謀反を起こさせる信長を演じるのは染谷将太だ。
「染谷さんの信長は変わり者。湖から出てくるシーンは、浦島太郎かと思った。過去の大河の信長は『国盗り物語』(1973年)の高橋英樹さんや『徳川家康』(83年)の役所広司さん、『秀吉』(96年)の渡哲也さんら、長身で強そうなイメージがある。染谷さんは違うイメージだけれど、こういう人がキレると怖いと思う。マザコンのように帰蝶(川口春奈)を慕っていて、実は帰蝶が裏で信長を動かしているという描き方も面白い」
それでは、ここまでの放送で最も印象深い人物は誰か。
「凄かったのは、やはり、本木雅弘さんの斎藤道三。本木さんが格好良すぎて、このままだと『道三がくる』になるんじゃないかと思った。最後、馬で川を渡る場面には、本木さんの力強さが出ていた。光秀をかわいがって、最後に信長を薦めて去って行くところも良かった。最終回にも光秀が道三を回想するシーンが出てくるんじゃないだろうか」
放送中の総集編ではその本木の道三を再び楽しめる。そして、本編再開後にはいよいよ歴史が大きく動く。長谷川の光秀の見せ場も間違いなく多くなる。平和の象徴の麒麟はどのようにやって来るのか?期待が高まる。
◆牧 元一(まき・もとかず)1963年、東京生まれ。編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴約30年。現在は主にテレビやラジオを担当。