「半沢直樹」 ラスボス・柄本明 徐々に見せる悪の顔「善良な役より面白い」
2020年08月30日 05:30
芸能
重要な役どころでの起用にも特別な思いはない。「またお仕事を頂いたんだなと。そういう仕事ですから。どんな仕事もそれぞれが特別で、それぞれが特別でないというか」。台本を覚えて、セリフを言う。それが「役者の仕事」だという。「そう言っちゃうと身もふたもないんだけど、でもそうなんだよね。どの仕事に向かう時も同じ姿勢ですよ」。平然と落ち着いて話す。
演じる幹事長の箕部は、半沢とバトルを繰り広げる白井国交相(江口のりこ)の後見人。首相への土下座一つで、政界進出したばかりの白井を大臣に起用させた。言葉は少ないが、徐々に悪の顔を見せていく。半沢にとってのラスボスとなる。
「悪い人ってのは面白い。ある種、欲望に負けていくわけだから。欲望のない人間なんていなくてね、その欲望は肥大化していくばかりで。悪っていうのは人間の持つ重要な要素ですよ。だから、善良な役よりは面白いですよ。ない頭を絞ってやってるワケだけど」
淡々と語る柄本には、欲望があるように見えない。「残念ながら欲望のない人間はいないから」と否定する。「欲のないように見える人はいますよね。高田渡というフォーク歌手がいたけど、“ああ、渡みたいになりたいな”なんてよく思ってた。やっぱり欲がないように見えるから」
とはいえ、作品を見てほしいという欲は「サラサラない」という。「“ここを見てもらいたい”とか、みっともなくないですか。でも“うまくできたな”なんて思う時に、自慢したいのは人間のさがじゃないですか。言わないにしても、どこかでにおうものでね。しょうがないですね、人間てものは愚かなもんですよ」。そう言うと、頭をかいて笑った。
悪の親玉も、最後には半沢の倍返しに遭う。「どう倒されるのか。逆立ちぐらいするか。逆さはりつけとかね。さらし首は嫌だなあ…」。柄本が戦いをどう終わらせるのか、最後まで見逃せない。
◆柄本 明(えもと・あきら)1948年(昭23)11月3日生まれ、東京都出身の71歳。劇団東京乾電池の座長。04年に「座頭市」「花」などで毎日映画コンクール男優助演賞を受賞。11年に映画界への貢献が評価され紫綬褒章を受章。役者一家で知られ、息子の佑(33)、時生(30)も俳優として活躍。1メートル75、血液型B。