書籍でよみがえる桂子師匠の金言 不安な時代を生きる現代人に“気付き”を与える
2020年09月05日 05:30
芸能
大正、昭和、平成、令和の4時代を生き抜き、関東大震災、世界恐慌、東京大空襲、二・二六事件などさまざまな歴史上の出来事を、その当時を生きた市井の人としての目線からつづった。そして温かく、時には鋭く、熟練の芸人らしいまなざしで現代を見つめ、豊富な経験に裏打ちされた金言を生み出した。記者との打ち合わせは東京・浅草に近い自宅。金言はきっぷの良い口調で語ってくれた。中でも「想定内を増やせ」の時の体験談は聞き手の背筋も伸びる貴重なエピソードだった。
台風のニュースを伝えたテレビのアナウンサーの「自分の命はご自分で守ってください」という言葉に内海さんは注目。関東大震災や東京大空襲で火の手が上がる中を生き抜いた経験を語り「運命はちょっとしたことで天と地の違いが出る」と力を込めた。スマホなどですぐに状況が分かる現代を「昔よりずっと想定外が減っているはずなのに災害は想定以上のことが起きている」と心配。「“命を守れ”は戦時中なら当たり前で聞く耳が持てなかったけれど、アナウンサーが今、言うのは危機を実感できていない人が多いから」とし、現代を生きる道は「情報量を生かして想定外を減らすこと」と語った。
金言はほかにも「年齢は都合で思い出せ」というユーモアあふれるものや「ピンチこそ前を向け」と背中を押すものなど多岐にわたった。九死に一生を得た場面に多く接してきた内海さんだが、そんな凄絶(せいぜつ)な経験を語った後でも、必ず「なんてことないよ」と言って笑った。この力強さが生んだ一冊。もう声を聞くことはできないが、言葉で読者を励まし続けていく。
【内海桂子さんの主な金言】(一部抜粋)
感謝の言葉は極上のギフト
新米だからこその武器がある
芝生の色は自分次第
ツッコミは良薬
想定内を増やせ
年齢は都合で思い出せ
ピンチこそ前を向け
欠点こそ大逆転の鍵
時には脱ゆとり
小言は聞こえるうちが華