鶴嶋乃愛(上) AIヒロインを魅力的にした文学女子の豊かな感性
2020年09月08日 10:00
芸能
![鶴嶋乃愛(上) AIヒロインを魅力的にした文学女子の豊かな感性](/entertainment/news/2020/09/08/jpeg/20200908s00041000143000p_view.jpg)
モデルの鶴嶋乃愛(19)。ファッション誌「Popteen」などで活躍していたが、演技の仕事は「仮面ライダーゼロワン」が初めて。つまり、女優デビューの役が人間ではなかったわけだ。
「あ、AIなんだ!?なるほど、どうしよう、やるしかない、と思いました。やっている時は、私としての記憶がない(笑い)。私はギリギリまで役に入らないタイプで、ボケーッとしていて、『テスト行きます、ハイ!』と言われたら、パッと切り替えます」
ドラマではボブのウィッグをつけていたが、実際はロングヘア。見た目の印象が映像と異なり、街ですれ違っても、あの役を演じていた人だと気づかないだろう。会話する雰囲気も、曲線的で、役柄の直線的な感じとは異なる。
7月発売の初フォトブック「恋と呼ばせて」に興味深い記述がある。好きな映画が「月曜日のユカ」と「渇き。」。2014年公開の「渇き。」はともかく、加賀まりこ主演の「月曜日のユカ」は今から56年も前の1964年の作品だ。
「私は昭和のアイドルやファッションが好きで、昭和の時代の物をいろいろ見ていたら『月曜日のユカ』が出てきました。世界観や撮り方が面白かったし、今の時代に通じる可愛さがある。あの18歳の女の子は自分に通じるものがあると思いました」
趣味のひとつが読書。日々の暮らしの中で行き詰まった時、小説を読むと打開できるという。好きな作家は千早茜さんで、お薦めの小説として千早さんの「正しい女たち」を挙げている。
「小説は、何はともあれ、いったん頭を真っ白にしよう、と思った時に読みます。『鶴嶋乃愛』として生きていくことをいったん忘れて別の人の人生をのぞく感覚です。千早さんが大好きなんです。どんなジャンルか、言葉で説明するのが難しいんですけど、人間の繊細な気持ちを事細かく書いてくれる。『正しい女たち』に書かれている女性の繊細な気持ちは、なんか分かる、と思います」
読むだけではなく、時に自ら書く。オフィシャルブログには、比較的長い文章で、身辺雑感などが記されている。
例えば3月13日。「最近の楽しみは帰り道に今日の夜ごはんは何を頂こうかしらなんてありきたりな事で 卵黄が何かと絡み合う姿はいつ見ても官能的でとてもとても好きな瞬間です」。なかなか楽しい文体だ。
例えば7月20日。「言葉は大事ですが所詮は言葉 行動が伴わないと意味がない」。確かに、その通りだ。
「撮影の帰りの電車や夜にパッと浮かんだ時に書いています。書いている時は時間を忘れている。『イズ』で私のことを知ってくれた人に『こんなに日々いろいろと考えているんですね!?』と言われたことがあります(笑い)」
AIヒロインを魅力的にした文学女子の豊かな感性。鶴嶋乃愛は、いったい、どんな人物で、これから、どこに向かおうとしているのか…。(つづく)
◇鶴嶋 乃愛(つるしま・のあ) 2001年(平13)5月24日生まれ、高知県出身の19歳。13年、「第21回ピチモオーディション」でグランプリ受賞。同年からファッション誌「ピチレモン」専属モデル。16年から今年8月まで「Popteen」専属モデル。身長1メートル63。
◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴約30年。現在は主にテレビやラジオを担当。