伊藤匠三段 10.1現役最年少棋士誕生!小3で藤井2冠を泣かせた男、まず「戦えるところまで」
2020年09月27日 05:30
芸能
藤井と対戦したのは小学3年生だった2012年1月、小学館学年誌杯争奪全国小学生将棋大会の準決勝。敗れた藤井は人目をはばからず号泣。それ以後、ほとんど涙を見せなくなったことから、伊藤には“藤井を最後に泣かせた男”の異名がついた。これには「親から聞きましたが、自分はほとんど覚えていません」と苦笑いした。
藤井の現在の印象を聞かれると「第一線で活躍される“トップ棋士”」と答えた。小学生の頃とは大きく立場が変わった。今の実力差を「かなり開いたと感じている。一手一手の精度、読みの精度が違う」と冷静に分析した。
ただ、常に意識する存在であることには変わりない。三段リーグは18年前期に初挑戦し、5期目の今回を15勝3敗の好成績で突破。藤井より若い現役最年少棋士となることが決まった。決して歩みは遅くないが「三段リーグ5期は自分にとって長かった」との言葉が漏れた背景には、瞬く間に頂点へと駆け上がった同学年の天才の姿があるのだろう。
「将棋に集中したかった」と高校は1年で中退。自身がプロ入りを懸けて苦悩する間に、かつてのライバルは2つのタイトルをつかんだ。藤井がレジェンド羽生善治竜王(当時)を破った18年2月の朝日杯オープン戦準決勝と、続く広瀬章人八段との決勝で伊藤は記録係を担当。目の前で、トップ棋士を次々と倒し優勝した藤井と自身を比べ「今は実力の差がある。現状では対戦することすら想像できない。戦えるところまで行かなくてはいけない」と静かに闘志を燃やした。
目標を聞かれると「タイトル戦で活躍できる棋士になりたい。タイトルを獲れる棋士になりたい」ときっぱり。上り詰めたその先に、藤井の姿を見据えている。(岩田 浩史)
◆伊藤 匠(いとう・たくみ)2002年(平14)10月10日生まれ、東京都出身の17歳。宮田利男八段門下。5歳の時、父雅浩さんに教わり将棋を始める。小5で奨励会入会。18年4月から三段リーグ参戦。得意戦法は相掛かり。趣味は野球観戦。
▽プロ(四段)になるには まず日本将棋連盟の研修会入会が必要。ここで規定の成績を収めると奨励会6級へ編入となり、以降も成績により昇級→昇段とステップアップ。三段になると約30人が半年間でリーグ戦各18局を行い、上位2人が四段昇段となる。このほかに3位(次点)を2回獲得すれば四段となって各棋戦への出場が可能となるが、順位戦だけは規定の実績を挙げるまで参加が認められない。原則として26歳までに四段昇段できない場合は退会となる。