永瀬王座 入王白星発進 「軍曹」初戦から“らしさ”全開110手決着
2020年10月12日 05:30
芸能
「序盤はかなり作戦負けになりそうな気がして、中盤まで苦しかった」と明かす前半戦。矢倉模様の立ち上がりから互いに角を自身の最下段に移動させる引き角布陣だ。ところが永瀬の30手目△3一角は長期休眠状態を強いられる。4二に配置した銀が重しとなって自由がきかない。「ちょっとつくりが悪い感じがした」。その銀をずらし、46手目でようやく角を6四に脱出させたものの、形勢的にはやや押され気味だった。
その直後、佐藤から激しい攻撃を仕掛けられる。47手目▲4五に跳ねた桂でミッドフィールドの戦火が急拡大。飛車角の大駒が狭い陣地で行き交う混とん状態となった。座布団から半身を乗り出し、頭部を盤上にかぶせながら必死に読みを入れる永瀬。先に馬をつくられる展開を歯を食いしばって耐える。交換して得た大駒を左辺に集中させ反撃を開始。一方で自身の左辺も成り駒となった2枚の大駒で侵食されていた。
なんとか手をつくろうともがいた努力はやがて報われる。佐藤の73手目▲2二竜で猛攻が一時停止。続く△4七馬から徐々に形勢を戻していく。
「永瀬ワールド」とも言うべき進行は最終盤に待っていた。佐藤の王を巧妙に包囲しながら、自王はスルスルと上部へ進む。86手目△6四王は「悪手でしたか。(以降)曲線的な指し方になってしまった」と苦笑いしたものの、左斜め前に逃げ道がきれいに空いており、入王に成功。同時に相手王を寄せきる念の入った勝利に導いた。
「内容がかなり悪かった。修正できるところは修正していかないとまずいですよね」と反省しきりの勝者。リーグの次戦は20日だが、その前に14日の王座戦5番勝負最終局(山梨県)の一山が待っている。久保利明九段(45)との対決は2勝2敗。負ければ無冠に転落する瀬戸際だ。「自分なりに一生懸命やっていきたいです、はい」。軍曹の激闘はまだまだ続く。
▽入王(いりおう) 自王が敵陣内(相手側の三段以内)に入ること。将棋の駒は前に進ませることが基本なのに、入王されると後ろから攻めることになる。これでは王を詰ますことが難しくなり、入王している側が有利となる。入玉(にゅうぎょく)とも言う。