「エール」戦争編完結 弘哉君にも悲劇 裕一は「自我の喪失」吉田照幸監督も感嘆した窪田正孝の台詞回し
2020年10月16日 08:20
芸能
第90話は、1945年(昭20)8月15日、長かった戦争がようやく終わる。梅(森七菜)を助けようとして戦火に巻き込まれた岩城(吉原光夫)は入院生活を続けていた。裕一は自分の作った音楽が人々を戦うことに駆り立て、その結果、若い人の命を奪ったと自責の念にさいなまれ、曲を書けなくなる。一方、劇作家の池田(北村有起哉)は戦争孤児のドラマの企画をNHKに持ち込む…という展開。
<※以下、ネタバレ有>
一足先に1人、故郷・福島から東京に戻った裕一は、かつて音の音楽教室の生徒で予科練に合格した弘哉(山時聡真)も戦死したことを母・トキコ(徳永えり)から告げられ、ショックを受ける。福島から戻った音と華(根本真陽)も呆然。弘哉に恋心を抱いていた華は泣きじゃくった。
裕一「(廊下に座り込み)華…弘哉君が亡くなった。僕のせいだ。僕のせい」
音「あなたのせいじゃない。あなたは自分の役目を果たしただけです」
裕一「役目…?音楽で人を戦争に駆り立てることが僕の役目か?若い人の命を奪うことが僕の役目なのか?音…僕は音楽が憎い」
語り(津田健次郎)「この日以来、裕一は曲を書かなくなりました」
第84話(10月8日)、弘哉が古山家に予科練合格の報告に訪れたのは1944年3月。弘哉は15歳、華は11歳だった。
今週第18週「戦場の歌」の脚本も執筆したチーフ演出の吉田照幸監督(50)は「裕一にとっては、すべての自我の喪失。自分の信じていたものがすべて崩壊していきました」と総括。裕一が戦後に名曲「長崎の鐘」などを生む大きな背景となる今作最大のヤマ場の1つとなった。
「僕は音楽が憎い」という裕一の台詞は「何度も書き直しました。窪田さんがつぶやくように表現してくれたのが、非常に印象に残りました。台本だけ読めば、叫ぶように言ってもおかしくない台詞。『ああ、この人はここまで追い詰められていたんだ』。凄いと思いました。あそこの一連のシーンは(二階堂の顔が見えるように)廊下の奥側から撮ったんですが、『僕は音楽が憎い』のカットだけ逆側(二階堂の背中越し)から窪田さんの横顔を撮りました」と明かした。