大河「麒麟がくる」 片岡鶴太郎の怪演で増す迫力
2020年10月26日 13:00
芸能
話している途中で声のトーンが変化する。将軍の足利義昭(滝藤賢一)に「いかがおぼしめされます?」と尋ねた時の語尾の「ます?」の音が高くなった。普通、こんな不自然な話し方はしない。
言葉を繰り返すこともある。幕府の横領を暴こうとする明智光秀(長谷川博己)に「教えて差し上げたのじゃが」と捨てゼリフを吐いた時、語尾の「じゃが」を二度言って強調した。嫌みの極みだ。
この人の登場で物語の構図が鮮明になった。新しい世の中を模索する革新的な信長と光秀に対し、幕府の存続を第一に考える保守的な晴門。単純な言葉で表せば、善と悪。演出の大原拓氏は「晴門は『幕府のラスボス』」と話す。
鶴太郎が大河に出演するは、2014年の「軍師官兵衛」で小寺政職を演じて以来。「軍師官兵衛」の演出も担当した大原氏によれば、政職は映画「仁義なき戦い」シリーズで俳優の金子信雄さんが演じた役柄ような優柔不断なキャラクターだったが、晴門は「とにかく悪い人」という。鶴太郎自身も「やはり悪役がいないと、ヒーローは輝かない。憎たらしいキャラクターを演じたいと思う」と意欲満々だ。
大原氏は「『悪』をストレートにやりすぎると単調になってしまう。鶴太郎さんは、コメディーのような部分とシリアスな部分を巧みに使い分けることができる。『悪』を前面に出しつつ、いろんな表情、いろんな表現をしていただいている」と話す。
その試みは奏功。晴門の躍動によってドラマの迫力は間違いなく増した。
鶴太郎は「光秀をどういじめていくか、どのような策略の中で光秀を動揺させるか、そして、視聴者のみなさんに『嫌なヤツだな』と思っていただけるか。官僚的な頭の良さと、エリートのプライドで、光秀をこれからどんどん追い込んでいく。さげすんだ目つきや顔つきにもぜひ注目してください」と話す。
その怪演がどこまで弾けるのか、期待が高まる。
◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴約30年。現在は主にテレビやラジオを担当。