「エール」撮了 窪田正孝13カ月の長丁場完走「財産に」コロナ禍乗り越え 撮影中断など前代未聞の状況
2020年10月30日 10:10
芸能
「まだまだ『エール』には、ご覧いただきたい素晴らしいシーンがたくさん出てきますので、最後までエールをよろしくお願いします」と呼び掛けた。
関係者によると、涙こそなかったものの、窪田は感無量の様子。やり切った清々しい表情も見られたという。
土屋チーフプロデューサー(CP)は「窪田正孝さん、13カ月の長期の撮影を、座長としてスタッフ・キャストを引っ張ってきてくださって、本当にありがとうございました!通常の撮影でも大変なのに、コロナ禍で撮影が中断、途中再放送でしのぐことになるという前代未聞の状況を乗り越えることができたのは、窪田正孝さんをはじめとするキャストの皆さんの熱意、そして『エール』にエールを送ってくださった視聴者の皆さんのご支援のおかげです。心より感謝申し上げます」と謝意。
「コロナ禍でさまざまな困難に多くの方が直面している今ですが、互いにエールを送り合って支え合いながら乗り越えていけることを願っています。ドラマは、最後のクライマックスに向けまだまだ波乱万丈です。裕一と音、そして仲間たちの行く末を最後まで見守っていただければ幸いです」と結んだ。
朝ドラ通算102作目。男性主演は2014年後期「マッサン」の玉山鉄二(40)以来、約6年ぶり。モデルは「栄冠は君に輝く」などで知られ、昭和の音楽史を代表する作曲家・古関裕而(こせき・ゆうじ)氏(1909―1989)と、妻で歌手としても活躍した金子(きんこ)氏。昭和という激動の時代を舞台に、人々の心に寄り添う曲の数々を生み出した作曲家・古山裕一(窪田)と妻・音(二階堂)の夫婦愛を描く。
朝ドラのクランクアップは報道陣に公開され、取材が行われるのが通例だが、撮影が夜遅くに及ぶなどした「なつぞら」、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため取材会を中止した「スカーレット」に続き、非公開となった。
朝ドラ史上、前代未聞の“逆境”の連続をはねのけた。
撮影が進む中、NHK「ハゲタカ」、フジテレビ「医龍」「コード・ブルー―ドクターヘリ緊急救命―」シリーズ、テレビ朝日「アイムホーム」などの話題作・ヒット作を手掛けた脚本家・林宏司氏が途中降板したことが昨年11月に判明。NHKは異例の交代劇の理由について「制作上の都合」とし、詳細を明らかにしなかった。後任は清水友佳子氏、嶋田うれ葉氏。チーフ演出の吉田照幸監督(50)も執筆に加わった。影響が心配されたが、幸い、大崩れはしていない。
3月30日朝、初回放送終了から約1時間半後、悲報が舞い込んだ。コメディアンの志村けんさん(享年70)が29日に新型コロナウイルスによる肺炎のため亡くなった。志村さんは朝ドラはもちろん、最初で最後のドラマ出演。主人公に大きな影響を与える大御所作曲家・小山田耕三役を演じ、初登場の第25話(5月1日)から第79話(10月1日)まで10回登場した(回想は除く)。生前、撮影時に語った「いつもの志村けんらしくない、こんなこともやりますよってところを見てもらえれば、うれしいね」のコメント通り、笑いを封印した重厚な演技。毎回、短い出番ながら圧倒的な存在感を放ち、話題を呼び続けた。
そして、新型コロナウイルス。収録は4月1日からストップし、6月16日に2カ月半ぶりに再開。放送は6月29日から中断し、9月14日に2カ月半ぶりに再開。休止中は初回~第65話を再放送。“2周目”の「エール」は“特別版”として、キャストが解説放送(副音声)を行う朝ドラ異例の試みを実施した。
放送再開前、取材に応じた土屋CPは「マスクを外して、メイクを直して、本番」など、コロナ対策をしながらの撮影は時間がかかり「通常の収録ペースの2割ぐらいダウン」。テイク数(本番の回数)も減らしているが、従来のペースの収録は難しいと明かした。結果、放送日程を見直し。当初の「全130回(26週)、最終回9月26日」から10話減の「全120回(24週)、最終回11月28日(本編の最終回は11月27日)」に変更となった。
放送休止前は連日大台20%超だった視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区、世帯)は中断が響き、再開後は18~19%に微減したものの、インパール作戦など戦争を生々しく描いた第18週「戦場の歌」(第86話~第90話、10月12~16日)は“朝ドラを超えた戦場描写”と大反響。戦後編の名曲「とんがり帽子」「長崎の鐘」「栄冠は君に輝く」の感動をより大きく、深くしている。