テレ朝・弘中綾香アナ、異国の風に抱かれて――「あざとい」と中傷、激務ストレスも…旅行からパワー
2020年11月01日 09:30
芸能
「いろんなことに縛られていたんだな、とか、凝り固まった考えを解きほぐしてくれた体験になりました」。特に性格や人生観が変わったわけではない。ただ、生きるのにきゅうきゅうとする自分を、いったん洗い流してくれた。旅はいつも、そんな蘇生感を与えてくれる。
大学時代に南米ボリビアのウユニ塩湖を訪れて以降、暇ができれば旅に出る。訪れた国は十数カ国に及ぶ。「行ったことがないところに行きたいんです」。水質や衛生面で若い女性が尻込みするような場所もへっちゃら。「住むわけじゃないから。3日くらいなら楽しめる」。日常では決まったメンバーと過ごし、同じ献立を注文しがちだったり変化を好まない気質だが、旅行となるとギアが入る。
「学生時代はトルコで、格好いいお兄さんにだまされかけました」。男に手玉にとられるなど、今や想像できない体験だ。「おごってあげるとかって日本語で誘われて。外国だと日本語、うれしくなっちゃうじゃないですか。危うくじゅうたんを売りつけられそうになって、あわてて逃げて無事でした」
異国では「単一化されている日本のルールが通用しないのが面白い」という。そして帰国すると決まって「灰色の世界に帰ってきちゃったなって思うんですよ」。屈託ない口調から、急にドキッとする表現が飛び出した。
花形職場、エース級の活躍。バラ色ではないのか。「お仕事ですからね。楽しいことばかりじゃないですよ」。笑いながらも、少し眉を下げつぶやいた。
メインを張る「あざとくて何が悪いの?」(土曜後9・55)など不定期出演含め5番組。「しなきゃいけないことに追われ“何してたんだろ、この1週間?”という感じ」。土日も関係ない。局内の期待にも重圧を感じている。
今や番組名通り“あざとい女”の代表のように言われる。「男性にこびてる」「勘違い」など、ネット上には心ない声も上がる。
「“あざとい”は賢くないとできないし、自分を客観視できてないと成り立たない。決して男性限定でモテようと思ってやってるわけではなく、みんなで楽しく仕事ができたらイイじゃん!って、その場の空気を回しているつもり」と、そうした声は意に介さない。でもポツリとこう言った。「人の心理を見抜いちゃうのが“あざとい”ということ。見抜こうとしてるんじゃなく“見抜いちゃう”んですよね」。意図せず、見なくていいものも見えてしまう。それは男女のあやにとどまらず、忖度(そんたく)や人の裏表などにまで及ぶ。
相手や状況に応じて千変万化し、軽やかに周囲の期待に応えていく、あざといまでの仕事ぶり。心も体も実は無理をし、窮屈なことだろう。「灰色の世界っていうのは、四角四面、がんじがらめという意味かな」。旅は、生きにくさに折れそうな自分を、つかの間解放してくれる特効薬なのだ。
本当は「全然働きたくないです。宝くじに当たったら辞めます」という仕事観。元々アナウンサー志望でもなく、それでも身を粉にして働ける原動力は、あざとさの鎧(よろい)を脱いで感じる異国の風だ。
◆弘中 綾香(ひろなか・あやか)生年月日は非公表。神奈川県出身の29歳。慶大卒業後の2013年にテレビ朝日入社。元々総合職志望だったが、試験日程が先で「人事に顔を覚えてもらえれば有利」と応募したアナウンサー職で採用された。同年10月から「ミュージックステーション」サブMCを5年間務める。出演中の番組に「ノブナカなんなん?」「激レアさんを連れてきた。」など。