最後の会話は「ごめん」…扇千景さん、夫・藤十郎さんをしのぶ 「役者として最後まで芸に生きた人」

2020年11月16日 05:30

芸能

最後の会話は「ごめん」…扇千景さん、夫・藤十郎さんをしのぶ 「役者として最後まで芸に生きた人」
坂田藤十郎さんと扇千景さん Photo By スポニチ
 12日に老衰のため88歳で死去した人間国宝の歌舞伎俳優・坂田藤十郎(本名林宏太郎)さんの妻で元女優の扇千景さん(87)が15日、「芸のために生まれ、役者として最後まで芸に生きた人でした」と63年連れ添った伴侶をしのんだ。
 自宅のインターホン越しに取材に応じた扇さん。口をついたのは「役者のまま一生を終えられたのは皆さまのおかげです」という感謝の言葉だった。「10歳で初舞台を踏んでから、87歳まで一度も休むことなく、風邪もひかず、芸能人生を過ごせたことがありがたい」と、現役のまま逝った夫を誇らしげに語った。

 亡くなる前日の11日には入院先で散髪したといい「“眉が伸びるのはお年寄りみたいだ”と言って。お年寄りなのにね」と笑って振り返った。翌12日に容体が急変。病院から「呼吸が弱い」と連絡を受けて駆けつけると、すやすや眠っていたという。「私が見ている間に亡くなりました。まるで寝ているようで、大往生でした」。安らかな旅立ちだった。

 最後の会話は夫からの謝罪だった。「“ごめん”と私に謝ったんです。病院にいることが理解できなかったようで、“どうしてこうなったんだ”と状況が分からなかったみたい。地方公演のホテルに泊まっていると思っているものですから、朝目覚めたら“楽屋入りは何時?”と。舞台のことしか頭にない人で…」。病床でも歌舞伎のことが一番だった。

 宝塚歌劇団時代に映画「海の小扇太」(1955年公開)で共演したのをきっかけに結婚。02年に坂田さんが51歳年下の舞妓(まいこ)との不倫を写真誌に報じられ、バスローブの前をはだけた“ご開帳写真”まで撮られた。夫婦間の大問題になるかと思いきや、当時国交相だった扇さんは「モテない男を主人に持ちたくない」と笑い飛ばす余裕を見せた。

 寛大な心で夫を支えた扇さんは「“お疲れさまでした”と声を掛けたい。私と縁があって63年。互いに一緒にいられたことが幸せでした」としみじみ語った。

 ▼片岡仁左衛門 大先輩であり、また、上方歌舞伎役者の旗印でもいらっしゃいました。そして、私の心の支えでもいらっしゃいましたので、今回の訃報を聞き、大きなショックを受けております。私が若いころから引き立てていただき、また、同じ演目でも山城屋さんと松嶋屋は役作りも違いますが、いろんなことを勉強させていただきました。上方色の濃いあの素晴らしい芸に接することができなくなりましたのは非常に残念でなりません。ただただご冥福を祈るばかりです。

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