朝ドラ「おちょやん」 100年前の道頓堀をオープンセットで再現

2020年12月07日 11:22

芸能

朝ドラ「おちょやん」 100年前の道頓堀をオープンセットで再現
100年前の道頓堀を再現したオープンセット(C)NHK Photo By 提供写真
 【牧 元一の孤人焦点】7日放送のNHK連続テレビ小説「おちょやん」で、大阪・南河内の農家で生まれたヒロインの千代(子役の毎田暖乃)が道頓堀に奉公に出た。
 時代は今から100年以上前の1916年(大正5年)。当時の道頓堀について「東京・浅草と肩を並べる芝居の街。多くの芝居小屋がひしめき、日本のブロードウェイと呼んでいいほどの娯楽の中心地でした」とのナレーションが入る。この街をひと目見た千代はその後の苦労も知らずに「おとぎの国やんけ!道頓堀、ええとこや~」と大はしゃぎだ。

 制作統括の櫻井壮一チーフプロデューサーは「今の道頓堀は、くいだおれ太郎やグリコの看板があって、にぎやかなインバウンドの街のイメージだが、100年前は実際に、通りに芝居小屋が立ち並んでいてブロードウェイのようだった。このドラマでは、そこで生きる人々を取り上げるので、できるだけ当時の道頓堀を再現したいと考え、オープンセットを作って撮影している」と話す。

 当時の道頓堀の建物は太平洋戦争の大阪大空襲(1945年)で焼失。戦前のことを知る人も少なくなっていることから、セットで再現された街並みを見るのは貴重な機会と言える。

 京都の撮影所のオープンセットを手掛けたのは、美術空間デザイナーの荒川淳彦氏とNHK大阪の掛幸善氏。過去に荒川氏は民放ドラマ「ロングバケーション」「やすらぎの刻~道」など、掛氏は連続テレビ小説「スカーレット」などに携わっている。

 2人は、当時実在した劇場をモチーフに、ドラマに登場する芝居小屋「鶴亀座」「えびす座」をデザイン。さらに全長約80メートルの通りに、カフェや中国料理店、うなぎ店、すし店、パン店、テーラー、写真館、時計店などを並べた。

 参考にしたのは、大正時代の道頓堀を撮影した写真や、残されていた地図、当時発行されていた雑誌の挿絵など。「地面から立ち上がっているように建物を見せたい」(荒川氏)というこだわりから、セットの建物のそばに実際に側溝を掘り、絶妙なリアリティーも生み出した。

 気になるのは、現在の大阪松竹座や、かに道楽などとの位置関係だ。櫻井氏は「われわれの中で『ここらへん』という設定はあるが、具体的な関係性はない」と語る。位置関係をあれこれ想像しながらドラマを見るのも一興だろう。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴約30年。現在は主にテレビやラジオを担当。
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