笑福亭鶴光 17年ぶりレギュラー復活で「日々進化」
2020年12月15日 09:45
芸能
番組コーナーのひとつ「世界の伏せ字ニュース」。鶴光は「きょうはスポニチさんが来ているからまじめに行きましょう」と言いつつ、放送にふさわしくない言葉を画用紙に書き、目の前の前島花音アナウンサーに読ませようとする。
生放送で一歩間違えれば崖から転落しそうなギリギリのトーク。下ネタ連発にもかかわらず、なぜか下品にならない、絶妙な話芸。ほかのパーソナリティーにはマネできない、唯一無二の世界がそこに広がる。
「笑福亭鶴光のオールナイトニッポン」(1974年~85年)から続く名物コーナー「ミッドナイトストーリー」。鶴光がゴールデンタイムとしては異様な艶っぽい声で語り始めると、あまりの熱量に、アシスタントの田中美和子はいすを後退させ、のけぞった。
あっという間の1時間30分。放送終了後のスタジオで、鶴光は「昔とやってることはちっとも変わりません。大いなるマンネリ番組。それがわれわれのポリシーでしょうな」と笑う。
そのマンネリズムがリスナーに支持されてのレギュラー復活。「17年ぶりにまた始まるなんて夢にも思わなかった。何をもって始まったのか分かりまへんけど、どっちみちナイターが始まる頃には終わる番組なんで、思いっきりはしゃぎたい」と語る。
田中はミッドナイトストーリーでのけぞることについて「平常心で聞いてられないですよ。落ちついて凝視できるようになるまで、あと何十年かかるんでしょう…」と苦笑い。24歳の前島アナが番組に参加していることに「彼女は年齢の割にうまくこなしている。今の子はすごく度胸があると思います」とたたえる。
17年前と変化したのは、番組とSNSが連動している点。放送中に撮影された鶴光らの愉快な写真がすぐに番組公式ツイッターに掲載され、リスナーは視覚的にも楽しめるようになった。
15日から17日までは1時間拡大放送。15日は夜に鶴光が岩手県宮古市での「みやこ復興寄席」の高座に上がるため、現地とスタジオをつないでのリモート出演となる。リモート対応が普通に行われるのもコロナ禍の今の時代ならではだ。
鶴光は「日々進化していきます。役者が初日よりも2日目の方が良くなるように、この番組も3月まで続くので、ちょっとずつ進化する余裕があります」とほほえむ。
比類のない話芸が70代を迎えてますますさえる理由を尋ねると、「結局、自分自身が楽しんでいるからでしょうね」と、端的な答えが返ってきた。
◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴約30年。現在は主にテレビやラジオを担当。