藤井2冠誕生の裏で…注目を集めた「AI形勢指数」棋士側は複雑
2020年12月23日 09:00
芸能
AI出現以前の将棋中継では、解説棋士のコメントが形勢判断の全てだった。しかしネット中継の先駆けとなった「ニコニコ生放送」がソフトの評価値表示を数年前から採用。ただし数値は絶対値で「400~500点差以内はほぼ互角」「1000点差は優勢」「2000点差以上は大差」といった独自基準にやや難解さが見られた。
今年に入り、AbemaTVが百分率での表示を開始。囲碁・将棋チャンネルも同方式を採用している。
ファンにとっては親切な情報表示でも、棋士側からは懐疑的な声が上がりつつある。前述の王位戦第2局について、王座経験のある中村太地七段(32)は「大逆転という報道もされたが、プロ的に見ると、ひとつのレールに乗ってしまえば、ああいう逆転もありうる」と自身のYouTubeで指摘。AIに詳しい羽生善治九段(50)も「形勢数値は(有利側に)楽観過ぎる。90%対10%でも、人間の目からすると6対4という時がある」と訴えた。その羽生は10月14日の王将戦挑決リーグで佐藤天彦九段相手に「1%対99%」から勝利をものにしているだけに、説得力は高い。
将棋は生身の人間同士の戦い。AIだけでは評価できない。ただ形勢が数字で表示されれば、何十手も先を読む頭脳戦を観戦する目安になる。藤井も「見ていただく際の楽しみの一つにしていただければ」と話している。対局する棋士の心理は、解説担当の棋士が読み解いてくれる。投了後の感想戦では、棋士自ら言葉を発する。AIと人間の言葉。これらを総合して自分なりに楽しむのが、21年の「観戦新様式」になるかもしれない。
《勝率・841も…》藤井2冠の今年は計63局で53勝10敗、・841と高勝率をマークした一方、棋聖、王位以外の5タイトル戦では番勝負に届かなかった。特に王将戦では挑戦者決定リーグで開幕3連敗を喫し、来期は2次予選からのスタートと、ほろ苦い結果。一般棋戦では3連覇を狙った朝日杯で準決勝敗退したものの、銀河戦では史上最年少で初優勝を飾っている。