大河「麒麟がくる」 本能寺の変は予想外の動機?

2021年01月01日 08:30

芸能

大河「麒麟がくる」 本能寺の変は予想外の動機?
大河ドラマ「麒麟がくる」で、明智光秀(長谷川博己)と織田信長(染谷将太)が話す場面(C)NHK Photo By 提供写真
 【牧 元一の孤人焦点】年が明けても、やはり、答えが見つからない。一種のミステリーとして楽しんでいるNHK大河ドラマ「麒麟がくる」(2月7日最終回)。最後に明智光秀が本能寺の変で織田信長を討つことは分かっているが、その動機を予想するのが難しい。
 年末放送の第38回で、斎藤利三の処遇をめぐって信長と光秀が対立する場面があった。激怒して席を立つ光秀。いよいよ2人の離反が始まるのかと思いきや、結局、信長が考え直して場を収めた。光秀は信長に贈られたバテレン土産の衣装を身につけて上機嫌。これでは謀反への伏線にならない。

 子供の頃、本能寺の変はパワハラに対する恨みが動機だと思っていた。ドラマで信長が光秀に理不尽な怒り方をし、時に暴力に訴える場面を見たからだ。ところが、成人し、さまざまな書物を読むにつれ、そんな単純な動機ではないことが分かってきた。決定的な証拠が残されているわけではないので、いまある仮説はさまざまだ。

 「麒麟がくる」は史実を追求する番組ではない。問題は、この物語の結末として、ふさわしい動機は何なのかということだ。長谷川博己が演じる光秀は、なぜ、染谷将太が演じる信長を殺さなければならないのか。それを考え続けて来たが、最終回まで残り約1カ月になった今も、答えが見つからない。

 重要なヒントはタイトル「麒麟がくる」だろう。麒麟とは、平和の象徴。光秀が追い求めているのは、民が平和に暮らせる世の中。動機は、そこに帰結するはずだ。光秀は平和に向けての方法論として、当初は「幕府」を考えたが、今は「信長」で推進しようとしている。信長が平和のために動いてくれればそれでいい。しかし、そうではないのならば排除しなければならない。

 問題は、どんな事象を契機に排除へと傾くかだ。信長は今後、本願寺と戦い、畿内全域を平定する。ところが、それでも戦いをやめようとはせず、四国攻めを考える。長く戦い続けた武将や兵はみんな疲れている。四国攻めを始めれば、さらに戦いが長期化する可能性が高い。光秀がこの流れを止めようと考え、信長が言うことを聞かなければ排除に傾くことは十分に予想される。本能寺の変の動機は、戦争拡大の阻止…。

 しかし、そこまで来て思考が固まる。ドラマとして、そんな単純な動機で面白いだろうか。自分が脚本家だったら、そう描くだろうか。ここまで池端俊策氏が作ってきた物語の流れを振り返ってみると、違う気がしてくる。だとすれば、史実や仮説とは関係のない動機、予想外の動機なのでは…。

 予想外の動機を考えて結論を下すのはなかなか難しい。視聴者の方々は、どう予想しているのだろう。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴約30年。現在は主にテレビやラジオを担当。
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