渡辺王将 貫禄の開幕戦6連勝、長考応酬制す「ここから調子上げたい」
2021年01月12日 05:30
芸能
異例の77手に達した第1日。転じてこの日はトッププロ同士の対決にふさわしい長考の応酬だ。封じ手の▲5五歩は「いろいろあり、いくらでも考えたいところだがそういうわけにもいかない。成算がそんなにあったわけではなかったんです」と心境を吐露する。
しかし、この心の迷いは対する永瀬をも迷わせていた。△同銀直の応手に63分を消費させる。自らも昼食休憩明けの81手目▲6八同飛(第1図)に77分もの時を投じたが、この時点ですでに流れは渡辺に傾きつつあった。
「明快さに欠ける局面がずっと続いていた。なかなか決め手がつかめない展開でした」
勝利を意識したのは107手目▲5三同飛成と大駒を切り、さらに109手目▲5四銀と永瀬王に迫った時点。「でも駒をたくさん渡していたので頓死は気にしていましたが…」。単純な見落としがないかを丁寧に確認しながら、着実に勝利をたぐり寄せた。
「ミスター開幕戦」と呼んでいいだろう。過去5度の王将戦登場で、第1戦はことごとく制している。初登場の第62期(13年)で佐藤康光王将を退けて以来、昨年の第69期(対広瀬章人八段)まで5連勝。そしてこの日の快勝劇。会場は全て掛川だ。「3つ、4つと勝っていくと得意なのではと思うので、それがいい結果になっているのでは」と、はにかみながら分析する。ミスター開幕戦はミスター掛川でもある。
順位戦を免除されている影響で、昨年11、12月の2カ月間はわずか2局だけ。今王将戦は12月11日の竜王戦ランキング戦以来、1カ月ぶりの真剣勝負に不安を抱いていたが「久しぶりの対局だったがそれなりに指せた。またここから調子を上げていきたい」とポジティブムードは全開だ。たかが1勝、されど大きな1勝。自身初の3連覇が視野に入る。