ドラマ「その女、ジルバ」 池脇千鶴の渋い味
2021年01月16日 07:45
芸能
地味な化粧と服装。年輪が見え始め、華やかさを失った面持ち。時給2000円に食指を動かしつつ、「無理だよ、ホステスなんて…」と思い悩む姿。池脇が物語の主人公像を的確に作り上げている。店内に入り、同僚となる超熟女たちによって派手な化粧を施され、華美な衣装に着替えた自分を鏡で見た時の驚き具合も真に迫っていた。
ドラマを制作する東海テレビの遠山圭介プロデューサーは池脇起用について「原作のキャラクターイメージから、パっと直感で浮かんだ。この原作をドラマ化する以上、40歳に近い人にお願いしないと意味がないとも考えていたので、池脇さんしかいないと思った」と説明する。
逆に言えば、池脇の魅力を引き出したのが、超熟女バーが舞台の原作。遠山氏は「ホステスたちのパワーに圧倒されると同時に、素直な心で現実を受けとめ、前向きに生き方を変え始める主人公の姿に共感し、いつかドラマ化したいと思っていた。閉塞(へいそく)感が漂い、どうしても画一的な考えに凝り固まってしまいがちな現代だが、少し物事の捉え方を変えるだけで価値観はひっくり返り、人生が豊かになる。そんなメッセージを届けられたら、と考えた。個人的にもスナックなどの酒場が大好きで『こんな店があったらいい!』と思ったのも大きな要因」と明かす。
16日放送の第2話では、店の超熟女たちの前向きな姿に感化された主人公が、昼間の職場でも明るい表情を見せ始める。しかし、店では早くも試練に直面。客と踊るソーシャルダンスを習得するため、特訓を受けることになる。
遠山氏は「このドラマの見どころは、主人公が強く美しく成長していく様子。のんびりマイペースだが、着実に前に進み、気がつけば周りが彼女に引っ張られていく。そんな彼女の成長ぶりを見守っていただければ」と話す。
男女を問わず、年齢を重ねて意気消沈気味の人々を励ますドラマだ。
◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。