“ラテンの女王”坂本スミ子さん逝く 84歳、主演映画「楢山節考」でパルムドール受賞

2021年01月24日 05:30

芸能

“ラテンの女王”坂本スミ子さん逝く 84歳、主演映画「楢山節考」でパルムドール受賞
坂本スミ子さん Photo By スポニチ
 NHKのバラエティー番組「夢であいましょう」の主題歌を歌い、銀幕でも活躍した女優の坂本スミ子(さかもと・すみこ、本名石井寿美子=いしい・すみこ)さんが23日午前3時35分、脳梗塞のため熊本市の病院で死去した。84歳。大阪市出身。葬儀は近親者で行う。喪主は長女聖子(せいこ)さん。83年にカンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールに輝いた主演映画「楢山節考」では老いた母役に前歯を抜いて臨み、鬼気迫る演技を見せた。
 世界に衝撃を与える演技を披露した坂本さんが静かにこの世を去った。

 本紙の取材に応じた聖子さんによると、今月2日、坂本さんは熊本県内の自宅で倒れた。周囲に人がおり、すぐ救急搬送されたため、処置は良好でわずかだったが意識もあったという。脳梗塞と診断されて入院。「血栓溶解点滴」を2週間ほど受けたが、状態が上向くことなく逝ってしまった。

 「ラテンの女王」と呼ばれた。高校卒業後、NHKの合唱団を経てラテン歌手としてデビュー。「夢であいましょう」に出演し、主題歌を担当して注目された。豊かな声量を生かした歌唱力、表現力で「夜が明けて」などが大ヒット。1961年から「NHK紅白歌合戦」に5年連続で出場した。

 女優としても大きな輝きを放った。中でも「楢山節考」の悲壮なまでの演技は世界を魅了した。緒形拳さんの演じた息子に山に捨てられる老いた母役。当初、同役は当時72歳の二葉早苗さんが務めていたが撮影の過酷さにダウンし降板。坂本さんは当時45歳。今村昌平監督の助監督を務めていた武重邦夫さんが推薦して代役に起用された。緒形さんとはわずか1歳しか違わなかった。

 劇中で、母親が自ら前歯を折る場面があるが「そのシーンに母の生きざまが集約されている。私も歯を折らなければ務まらない」と、前歯を4本抜いて撮影に臨んだ。

 差し歯が合わなければ歌手生命の危機。だが「歌手生命が終わってもいい」との覚悟で挑んだ。グラマーな体形だったが、14キロも減量。特殊メークでシワを施し、どう見ても老人に。強烈なインパクトを残した。

 今村監督に代わって出席した、仏カンヌでの授賞式では黄色い和服姿で「メルシー・ボークー。ありがとう」とフランス語を織り交ぜあいさつ。拍手と歓声に包まれた。

 ほかに今村監督の「『エロ事師たち』より 人類学入門」などの映画やドラマでも活躍。その後、坂本さんは夫で医師の石井礼次郎さんの母を介護するため、約25年前に熊本に移住していた。

 12~13年前にも脳梗塞を患ったが、その時は乗り越えていた。聖子さんは「他には骨折をしたくらいでずっと元気でした。80歳の時にブルーノート東京でライブをするなど、生涯歌手でした」としのんでいた。

 ◆坂本 スミ子(さかもと・すみこ)本名石井寿美子(いしい・すみこ)。1936年(昭11)11月10日生まれ、大阪府出身。NHK大阪合唱団を経て、58年にフリーのラテン歌手となり「トリオ・ロス・パンチョス」の全国公演に共演して注目される。その後「たそがれの御堂筋」「夜が明けて」などがヒット。60年に映画初出演し、以降は女優としても活躍した。長女の聖子さんも歌手として活躍した。

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