浜崎美保 人に寄り添う美声
2021年01月27日 08:30
芸能
浜崎は「声のトーンをそれぞれのドラマに寄せています。ベランダはその人の人生が表れる場所。この番組に登場するみなさんは東京の限られたスペースで自分がやりたいことを表現している。そこにドラマを感じます。その人たちのドラマによってBGMも変わります。私は映像を見て、音楽を聞いて、最終的な自分の気持ちを込めて読んでいます」と話す。
ナレーション収録前に決められているのは、読む文章と制限時間だけ。どのように読むかは浜崎の裁量に任されている。幸せそうな内容には明るい声、重そうな内容には落ちついた声…。同じ番組でも、さまざまな声を自分の感覚で使い分けることになる。
演出の大橋圭史氏は「『心地よい音楽とナレーション』を目指そうと思い、当初からナレーターは女性と考えていた。『聞くと脳内でα波が出るような声』の持ち主は誰だろう?と、作家の森泉氏と話し合っていたところ、すぐに、お互いにラジオで知っていた浜崎さんの名前が出た。浜崎さんのナレーションを入れて、より番組の世界観がハッキリと見えた気がする。収録の際、私自身が聞き入ってしまい、キューボタンを押し忘れてしまうことが多々ある。そのくらい心地よい声」と明かす。
浜崎が学生時代に目指していたのは、歌って踊る人。地元・鹿児島の事務所でレッスンにいそしんだ後、テレビやラジオに出演するようになった。
浜崎は「最初は『ナレーターって仕事があるんだ?』という感じ。初めて地元でナレーションの仕事をした時は『変な声』と違和感を覚えました。昔は、ただ必死に読むだけ。視野が広がって『これを書いた人がいる。これを受け取る人がいる』と考えられるようになったのは、たくさんお仕事をさせていただくようになってからです。今はナレーターに徹する作業がすごく好き、誰かが生んだ言葉を私が伝える作業がすごく好きです」と話す。
好きになったきっかけがある。6年前に担当したチョコレートのラジオCM。収録現場にいたコピーライターは当初、浜崎のナレーションの力量を疑う様子だったが、収録が終わると、できばえに満足そうな様子を見せた。そのCMの音声はラジオで流れただけではなく、当時、クライアント企業のウェブサイトにも採用されたという。
「誠実に、気持ちを込めてやると伝わるんだと思いました。声だけでも、伝わるものがある。ナレーションは大事な仕事だという自覚がわきました」
4年前にはBS朝日「ママをたずねて三千里」のナレーションを担当。ドキュメンタリー番組で、誰かの人生に自分の声を重ねる楽しさを知った。
「私は個人的にドキュメンタリーが好きです。いま生活している人の人生を伝えたい。その人が一般の人の場合、視聴者には先入観がない。そこに声を乗せるのは責任重大ですが、私はやりたいと思います」
人に寄り添うその美声で、自分のことを語ってもらいたいと思う人は、きっと、多いに違いない。今後ますます浜崎の活躍の場は広がりそうだ。
◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。