大河「麒麟がくる」長谷川博己 「受け」から「攻め」の頂点へ
2021年02月07日 12:00
芸能
脚本家の池端俊策氏はこう振り返る。「光秀は相手が言ったこと、行動したことに反応する『受ける芝居』が多く、脚本も『……』」となっていることが多かった。解釈の仕方や受け止め方、大げさに反応したらいいのか、ちらっと瞬きをする程度の反応なのか、大変難しい役だったかと思う」。
長谷川の共演者に対する反応のさじ加減は絶妙だった。それゆえに、本木や染谷がさらに輝き、光秀の母・牧を演じた石川さゆりや妻・煕子の木村文乃、信長の妻・帰蝶の川口春奈らも魅力的にした。
池端氏は「光秀は僕だと思って書き、そこに長谷川さんが見事に入り込んでくれたと思う。僕は光秀が長谷川さんで大正解だったと思っている」と話す。
その長谷川の芝居が転換した。最終回に向けて徐々に熱さを帯びるようになっていたが、その沸点が1月31日の放送だ。徳川家康を供応する場面で信長に足蹴(あしげ)にされ、森蘭丸に「下がれ!」と押されると、その蘭丸を投げ飛ばして、空手チョップまで食らわした。この場面の形相は異様。信長を見つめる目が完全に飛んでしまっていた。信長の狂気を上回るような光秀の狂気。長谷川の「攻め」の芝居を実感した。
ドラマ関係者は「長谷川さんは、どうやって本能寺まで至ろうか、常に考えていた。キャラクターの作り方で、迷い、悩むこともあったと思う。だが、最後の頃は楽しそうに演じていた。本能寺のロケで、出し切った印象だった」と明かす。長く抑えて来たものを解き放つのはさぞや心地よかろう。
そして、7日の最終回で、われわれは「攻め」の頂点を目にすることになる。
◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。