小林克也が聞いたポール・マッカートニーの「オイス!」
2021年02月11日 10:15
芸能
「ベストヒットUSA」で小林がポールをインタビューしたのは1980年代。きっかけは、ポールが80年に来日した際に成田空港の税関で大麻所持のため摘発され公演中止になったことだった。小林は「ポールは日本のファンに言いたいことがいっぱいあるはず。ポールなら、きっと会ってくれるから、頼んでみよう」と考えたという。
レコード会社を通じて依頼すると「いつでもロンドンに来なさい」との返事。早速、番組スタッフとともに、ロンドンでポールが所有するビルを訪れた。そのビルは1階がポールの出版社で、2階から上は空き部屋。ふだんはポールの妻の展覧会などに使っているそうで、関係者から「どの部屋を使ってもいい」と言われた。
空き部屋で収録用の準備を済ませて待機。ここにポールが姿を見せるということで全員が緊張し、現地スタッフの中には興奮で耳を真っ赤にしている人も。やがて収録用の化粧を施し終えたポールが上機嫌な様子で登場。20メートルほど離れた場所から、小林らに放った第一声は「オイス!」だった。
小林は「『オス!』じゃなくて『オイス!』。それでパッとみんなの氷が溶けた。ポールからは『何を聞きたいんだ?』と言わた。後から考えると、あれも聞けば良かった、これも聞けば良かった、なぜ聞かなかったんだと思うことばかり。番組でその時の自分を見て『こいつ、舞い上がっているな』と思った」と振りかえった。
インタビューの相手は「ザ・ビートルズ」のメンバーとして音楽史に残る超大物。実際に対面すれば普通の心理状況でいられるはずがない。そもそも、大麻問題の後、気後れせずにポールにインタビューを申し込み、本当に実現させてしまった実行力が並大抵ではない。
小林は「ポールはいい人。日本で言えば、野球の長嶋茂雄さんに似ている。明るくて、誰とでも気軽に話す。街を自動車で走っていて工事現場で止まると、わざわざ車から降りて現場の人に『何の工事?』と聞くこともあるらしい」と話した。
本来は遠い存在の外国ミュージシャンが身近な人に感じられる逸話の数々。40年にわたって「ベストヒットUSA」のVJを続けてきた小林の真骨頂だ。3回目のサロンは3月8日。とっておきのエピソードを聞く楽しみが続く。
◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。