東野絢香 朝ドラ「おちょやん」で杉咲花と化学反応 「話すだけで涙が出るくらい」
2021年02月16日 08:30
芸能
福助への思いを打ち明けた場面には、初々しい乙女の表情が映っていた。
東野は「あのシーンは楽しんで演じられました。福助に対する、みつえの『好き』の気持ちがあふれています。福助とのシーンは、台本のセリフが終わっても、カットがかからず、2人でアドリブのやりとりをずっと続けることがあるんです。カットがかかった瞬間、『何を言っているか分からなかったね』と笑っちゃいます。この週の撮影から、井上さんと撮影の合間に話すようになって、より仲良くなりました。あのシーンには、ふだんの仲の良さを良い具合に持ち込めたと思います」と振り返る。
福助のトランペットを堀に投げ捨てたシーン(昨年12月放送)には、みつえの喜怒哀楽の激しさがよく表れ、笑いを誘った。
「福助と2人でやりとりするのはあのシーンが初めてでした。1回目(12月17日放送)は勢いでトランペットを投げましたが、2回目(同23日放送)は少しだけ間を置きました。台本にはセリフと『トランペットを投げ捨てる』くらいしか書かれていなくて監督さんからも言われたわけではないのですが、自分が怒っていることを福助に伝えてから投げました」
初めての朝ドラ出演で、自ら考えた芝居を混ぜ込められるところに、役者としての力量を感じる。
「初めの頃は緊張していたし、やっていいのか分かりませんでした。だんだんできるようになって、今は楽しんでいます。ふだんより柔軟にできているかなと思います」
杉咲との共演場面には熱さを感じる。みつえが体を張って千代を道頓堀から逃がしたシーン(昨年12月25日放送)は、物語前半屈指の名場面だ。
「杉咲さんとは同じ年で、役と同じように本当に仲がいいです。私は人見知りなので、初めの頃はついて行くのに必死でしたが、優しく心配りして頂きました。ちゃんとお話ししたのは、みつえが千代を道頓堀から逃がすシーンの前でした。あのシーンの後に『すてきだった。そのすてきな表情をいちばん近くで見られて良かった』と感想を頂きました。それまでは共演者のみなさんのところにお邪魔している感覚でしたが、あのシーンで認めてもらえたかなと感じ、余計な雑念が抜けて、自分も一員として頑張らなければいけないと思いました。この方に出会えて本当に良かったと思える女優さんです」
2人がしっかりと組み合った芝居から化学反応が生まれているように見える。
「杉咲さんと目を合わせた時に生まれる空気を大切にしています。話しているだけで涙が出るくらい、目から伝わって来ます。千代とのシーンは何かを準備していこうという気持ちが一切なく、その場で杉咲さんから受け取ったものを自分も返します。みつえと千代としてそこにいられて、役者としての雑念が一切ありません。こういう感覚になるのは珍しいです。波長が合うということもあるでしょうが、杉咲さんの演技に助けられていると思います」
芝居について語るのがとても楽しそうだ。
「お芝居に関しては、困難なことも楽しいです。苦しいこと、つらいことはたくさんあります。でも、つらかったシーンも、後で見て、いいシーンになっていると、うれしいですし、結果的に、全部楽しかったと思います。趣味もあまりないので、お芝居は『唯一好きなこと』と言えるくらいです」
好きな芝居をする充実感が画面からにじみ出るところが、女優・東野絢香の魅力の根源なのかもしれない。
話していて感じるのは、役柄の印象との違いだ。みつえは硬い感じだが、本人はとても柔らかな感じ。髪形や衣装の影響もあるだろうが、何より、役作りが完璧なのだろう。これでは、街に出ても、みつえ役の女優だと気づかれないに違いない。
「1回も気づかれたことがないです。少しは声を掛けてもらえるよう、頑張らなきゃと思います」と笑う。今後のさらなる飛躍が楽しみな逸材だ。
◇東野 絢香(ひがしの・あやか)1997年(平9)11月9日生まれ、大阪府出身の23歳。女優を志して18歳で上京。2018年、VIPO主催アクターズセミナー賞優秀賞受賞。19年の舞台「掬う」などで注目され、昨年、オーディションで「おちょやん」出演。身長1メートル70。
◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。