この魅力たまらない!清水伸の底力が凄い

2021年03月18日 17:20

芸能

この魅力たまらない!清水伸の底力が凄い
映画、ドラマ、CMと引っ張りだこの清水伸 Photo By スポニチ
 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】俳優の清水伸(48)にインタビューした。「ニトリ」のCMで漂わせるコミカルな味。これが大好きで、ずっと会ってみたいと思っていた役者さんだ。
 「百円の恋」「ホテルローヤル」などで知られる武正晴監督が演出した「アンダードッグ」でタイ人ボクサーのチャンプアを演じ、異彩を放った。

 「エゴサーチしても1個も引っかからないんです。映画をご覧になった方は、ふつうにタイ人だと思われていたみたいで…。プロデューサーが宣伝部と協力してネット記事にしてくれて、ようやく清水伸という役者とつながったようです」

 それぞれ事情を抱えたボクサー3人の再生の物語。森山未來(36)、北村匠海(23)、勝地涼(34)が体を張ったパフォーマンスで魅了したが、清水も負けていない。「インパクトもそこそこあって、隠れた4人目のアンダードッグという気持ちでいました。実際のボクシングの世界でも有望な選手がスターに駆け上がる段階で、2戦目3戦目とかに外国人選手と試合をさせることがありますよね」

 ズブの素人では出来ない“かませ犬”という難役。実際にボクシングジムに通った経験が生きた。「20年くらい前ですかね。『あしたのジョー』の実写化の企画が立ち上がっては消える状況が続いた。僕が20代中盤の頃です。“いつでもオーディションを受けられるように習っておこうか”みたいな感じで近所のジムに通ったんです」

 そこは元WBA世界ライトフライ級王者の渡嘉敷勝男(60)が開いた渡嘉敷ジムだった。北野武監督の映画やバラエティー番組に出演するなどタレントとしても活躍する渡嘉敷の元で練習に励み、メキメキと力をつけていった。

 「役作りで通うつもりが、実際にプロテストを受けるまでになりました。落ちたけど、その頃、やはりボクシング絡みの仕事が来ましたね」

 天願大介監督の「AIKI」(02年)は交通事故で下半身まひの障害を負ったボクサーが合気柔術で再び生きる力を取り戻していく物語。主演の加藤晴彦(45)が花形ボクサーだった時代に対戦相手として登場したのが清水だった。この現場でチーフ助監督を務めていたのが武監督。「“清水はボクシングが出来る”というデータが頭にインプットされたと思います」

 2014年9月に公開された唐沢寿明(57)主演の映画「イン・ザ・ヒーロー」では監督と俳優としてジョイント。今作の「アンダードッグ」の配役にもつながった。「タイ人で、ボクシングが出来て、日本語でお芝居が出来る。めちゃめちゃハードルが高いキャスティングですが、武さんがプロデューサーに“清水伸という役者がいる。はまると思います”と薦めてくれたんだと思います」

 2020年の春。東京・文京区の後楽園ホールで撮影が行われた。「“僕たち、AIKI以来ですね。後楽園ホールに戻ってきたのは”と、武さんと話しました。感慨深いものがありましたね。(森山の父親を演じた)柄本明さんも後楽園ホールのリングに立った経験があったそうです。たこ八郎さん役で…」

 プロボクサーからコメディアンに転身したたこ八郎さんの半生を描き、84年6月に放送された柄本主演のNHK銀河テレビ小説「迷惑かけてありがとう」(全20話)だ。ちなみにたこさんは放送翌年の85年7月24日に44歳の若さで亡くなっている。海水浴中に心臓まひを起こしての不慮の死だった。

 清水は新潟から大学進学で上京。人前で何かをやるのが好きで、最初はバンド活動に精を出していたが、途中で俳優を目指すことを決意。大学も辞めた。

 「オーディションを幾つか受けましたが、意外と受かるもんなんです。そんな中、映像の仕事も積極的に取り入れる劇団に入りました。殺陣師のお弟子さんが大部屋俳優を養成するとともに、舞台もやるために立ち上げた劇団です」

 時は90年代前半。ちょうど東映Vシネマの全盛期で、不良グループの5番手やヤンキーの殴られ役などひっきりなしに仕事が入ったという。映像でやっていく下地が出来た。

 一方で、世田谷もの作り学校に、シネカノン元代表で映画プロデューサーの李鳳宇氏が開設したスクーリングパッド(俳優養成講座)にも通った。第2期生で、全20回。そのうち3回か4回、講師としてやってきたのが井筒和幸監督だった。「おまえ、おもろいな」と目をかけてもらい、10年公開の「ヒーローショー」に呼んでもらった。

 「井筒監督が目をかけてくれたのは木下ほうかさん以来だったと聞きましたが、そこから12年ほどのお付き合い。“身内の中で売れてないのはおまえだけだ”とハッパをかけられてます」

 昨年12月に封切られた井筒監督の8年ぶりの新作「無頼」にも若頭役で出演。感謝するばかりだが、そんな恩人からは「二代目牧冬吉を襲名しろ!」といじられている。67年から68年にかけてフジテレビ系で放送され、人気を呼んだドラマ「仮面の忍者 赤影」で白影を演じたのが牧冬吉さん(98年に67歳で死去)…といえば、ピンと来る方も少なくないだろう。確かに似ている。

 数々の出会いが清水の俳優人生を実り豊かなものにしている。「運も実力のうちと言いますが、確かに恵まれたかな、と思っています」としみじみ。99年の旗揚げから参加する劇団「ふくふくや」の座長にして看板女優、劇作家の山野海(55)もそんな1人だ。「wowowの連ドラの脚本を書いたり、小説を手掛けたり、とにかく才能豊かな人です。小劇場はお金にはなりませんが、お客さんと呼吸をしながら演じていく高揚感は映像にはないもの。それが魅力です」と熱く語る。

 コロナ禍で、趣味の旅行もままならない。生活様式は一変したが、仕事は順調だ。NHK朝の連続テレビ小説「エール」にもレギュラー出演し、4月18日から始まるwowow開局30周年ドラマ「華麗なる一族」にも顔を出す。主演の中井貴一(59)もニトリのCMのファンという。「重厚な役から、小気味よくてちょっととぼけた味もうまい中井さんは、目指すところです!」と清水は真顔で語る。

 10月には原田眞人監督の「燃えよ剣」の公開が待つ。原田監督の息子さんで編集技師の(原田)遊人さんから声をかけてもらった。新選組五番隊組長の武田観柳斎役。多くの出会い、そして培ってきた実力が満を持して大輪の花を咲かせそうな気配だ。
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