松下奈緒 ドラマ「裕さんの女房」で石原まき子さんを体現 「架け橋になれれば」

2021年03月19日 10:14

芸能

松下奈緒 ドラマ「裕さんの女房」で石原まき子さんを体現 「架け橋になれれば」
ドラマ「裕さんの女房」で石原まき子さんを演じる松下奈緒(C)NHK Photo By 提供写真
 【牧 元一の孤人焦点】NHK・BSプレミアムのドラマ「裕さんの女房」(4月17日放送、今月20日にBS4Kで先行放送)に主演する女優の松下奈緒(36)がインタビューに応じた。
 昭和の大スター・石原裕次郎さんの妻・まき子さんを主人公とする物語。1950年代、まき子さんは女優・北原三枝として活躍していたが、裕次郎さんと結婚して引退し、夫を支えていく。

 松下は「これまでも裕次郎さんのドラマはありましたが、まき子さんの主観で描く作品はこれが初めてだと思います。まき子さんを通じて、裕次郎さんを感じてもらえれば」と語る。

 まき子さんが女優として活動したのは1952年から60年まで。裕次郎さんがデビューする前からスターで、映画「青春怪談」「流離の岸」などに主演した。

 「『石原まき子さん』と言われると身近に感じられますが、『北原三枝さん』と言われると、大先輩過ぎて…。北原三枝さんは、どこか、お姉さん的で、あこがれられる存在。私の両親より少し上の世代には、たまらない女優さんだと思います」

 まき子さんと裕次郎さんは、56年の映画「狂った果実」で初共演。2人はやがて恋愛関係になり、60年に結婚したのを機に、まき子さんは芸能界から完全に退いた。

 「1番の幸せを手に入れたのだと思いました。まき子さんにとって、女優として生きていくより、裕次郎さんと一緒になる方が幸せだった。裕次郎さんと出会わなければ、その選択はしなかった。その関係性がすごいと思います。偶然のようで、必然のような出会い。映画のような人生です」

 結婚して間もなく、裕次郎さんがスキー中の事故で右足を複雑骨折。入院した裕次郎さんはベッドで簡易便器を使用したが、ある日、まき子さんの手にもらしてしまうハプニングがあった。その逸話がドラマに盛りこまれている。

 「好きなシーンです。まき子さんは手で受け止めた後、『勝ったわ』と言うんです。裕次郎さんの周りにクラブのママや芸者さんがいても、そんなことは自分にしかできない。まき子さんが裕次郎さんの女房になったことを実感するシーンです。夫婦でも、なかなかそこまではできません。まき子さんがいかに裕次郎さんを思っていたかが分かります」

 裕次郎さんの晩年は病気との闘いだった。生還率3%とされた解離性大動脈瘤(りゅう)の手術や本人に告知しなかった肝細胞がんなど。まき子さんにとって過酷な看病の日々が続いた。

 「まき子さんは片時も離れず、看病されていました。もちろん、そういうシーンはあるけれど、このドラマには暗い印象が全くありません。裕次郎さんは大病を患っても、退院したらどうしようかと、夢を追い続けていました。とてもアグレッシブなので、暗い気持ちにならないんです」

 松下がまき子さんに初めて会ったのは撮影の終盤。東京・成城の石原邸の庭を借り、裕次郎さん役の俳優・徳重聡(42)らとともにロケした時だった。松下が「初めまして」とあいさつすると、まき子さんは「奈緒ちゃん、良く来てくれた」と喜んで迎えてくれたという。

 「『奈緒ちゃん』と言われた瞬間、それだけで『ああ、良かった』と思いました。お元気で、かわいくて、お話しが上手で、楽しかった。私が本で知ったことを、まき子さんの口から聞くことができて感無量でした」

 松下にとって印象深いのは、撮影終盤まであいさつできなかった悔いをまき子さんに伝えた時のこと。まき子さんは「私にもそういう経験があるから、気持ちは良く分かる。でも、今こうして会えたから、いいじゃない。最初に会ったら、私に似せようとしたでしょう?」と話してくれたという。

 「そう言ってくださって、とても、うれしかった。私はどんな小さなシーンでも『裕次郎さんが1番』という思いを残せるように演じて来ましたが、まき子さんにお会いして、自分がやって来たことに間違いはなかったと感じました。皆様に石原ご夫妻を身近に感じてもえる架け橋に私がなれればいいと思っています」

 このドラマは、松下を通じ、まき子さんの魅力を浮き彫りにする。裕次郎さんを知る世代にも、知らない世代にも、心地よく響くに違いない。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。
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