草なぎ剛 大河「青天を衝け」徳川慶喜役に「人生賭けてる」

2021年04月06日 10:30

芸能

草なぎ剛 大河「青天を衝け」徳川慶喜役に「人生賭けてる」
大河ドラマ「青天を衝け」で徳川慶喜を演じる草なぎ剛(C)NHK Photo By 提供写真
 【牧 元一の孤人焦点】NHK大河ドラマ「青天を衝け」で、江戸幕府の最後の将軍となる徳川慶喜を演じている俳優・草なぎ剛(46)がインタビューに応じた。
 ──慶喜は、はまり役に見えますが、ご自身の実感は?
 「みなさんが楽しんでくれているようなので、いい感じかな、と思っています」

 ──難しい役なのに力むことなく演じているように見えます。
 「普通にやっているというか、みなさん、スタッフの方々も温かいので、失敗しても大丈夫かな、失敗したらもう1回やればいいかな、と思ってやっています」

 ──昔から、そんな柔らかい演じ方でしたか?
 「だんだんですかね。今でも力が入っていますし、やはり、『うーん』って、なっちゃう。なるべく自然にできたら、と思っています」

 ──芝居が自然で、素のように見えます。
 「時代劇だからと言って、あまり構えずにやりたい。だから、僕の素に近くていいのかな、と思います」

 ──別の取材で慶喜について「自分から離れている感じ」と話していましたが、実際は距離が近いのでは?
 「まあ、そうですね。所によって距離があるし、ある所では近いのかもしれない」

 ──演じやすい役柄?
 「あまり考えないです。それが自分のいいところだと思うので、台本も自分のところしか読んでないし、意味が分からないでやってます。『◯◯へ行け!』と言っても、どこのことを言っているのか分からない。そのくらいでもいいんじゃないか。歴史上の人で、ストーリー的には、みなさん、分かっている。だから、あまり余計なことをしないで、内容を半分くらい分かっていればいいんじゃないですかね」

 ──普通は肩に力が入ってしまって、そういうアプローチはなかなかできないと思います。
 「誰かに怒られそうなんですけどね」

 ──キャリアを重ねた今だからこそ、それができる?
 「そうですね。なるべくフラットで、先入観を持たずにやるにはどうしたらいいかな、と考えると、そのくらいの方がいい。あまり頭でっかちにならないで、という感じですかね」

 ──これまで役者を続けてきて、それがいちばん良いアプローチだと?
 「演じ方は、これからまた変わるかもしれない。でも、いろんな作品をやって、つながってきて、これでいいんじゃないかと思ってます。ベストは出さないといけないし、出したい。でも、そんなに考え込んでも逆に動けなくなっちゃうという感じがある。ちょっと抜いた感じでいきたい」

 ──演じていて楽しいですか?
 「それはありますね、やっていて。ワクワクしているというか。ここのシーンはたぶん凄いんだろうな、とか思って、そういうのは楽しいですよね」

 ──長い大河の撮影で生活の変化は?
 「撮影の時は集中しています。さすがに、セリフを覚えないといけない。やはり、友だちと遊べなくなるしね。それは当たり前のことなんで。結構ちゃんと集中してやっています」

 ──大河が終わったらやりたいことは?
 「とにかく、これを乗り切りたい。乗り切るというか、楽しみたい。その先は全然考えていない。慶喜が楽しいから、その気になってやっている感じですかね」

 ──思い出に残る作品になりそう?
 「なると思う。たぶん、終わった時、泣くんじゃないですか。『終わった、大河、終わった!』って」

 ──それほどですか?
 「僕の人生においても大きな物になると思うし、やはりターニングポイントになると思う。この役をやったことによって、次のステップに進みたいと思う。それだけ人生賭けてやっています」

 ──今後の慶喜にも期待してます。
 「ありがとうございます」

 ドラマに向かう草なぎは、良い具合に力が抜けている。芝居から気負いが浮き出ていないから、とてもなじみやすい。それは、長年の経験から導き出された独特のアプローチに違いない。そんな力の抜け具合はインタビュー中も同じだった。話が軽やかに流れていく。重い言葉は出てこない。ところが、最後になって「人生賭けてやっています」と明かした。それまでの受け答えからすると違和感すら覚える重さで、少し驚かされた。しかし、それこそが本心であり、慶喜をあのように魅力的に映す要因だと思った。奥底に秘めた覚悟。今後ますます良い芝居を見られそうだ。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。
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