草なぎ剛 大河「青天を衝け」徳川慶喜役に「人生賭けてる」
2021年04月06日 10:30
芸能
「みなさんが楽しんでくれているようなので、いい感じかな、と思っています」
──難しい役なのに力むことなく演じているように見えます。
「普通にやっているというか、みなさん、スタッフの方々も温かいので、失敗しても大丈夫かな、失敗したらもう1回やればいいかな、と思ってやっています」
──昔から、そんな柔らかい演じ方でしたか?
「だんだんですかね。今でも力が入っていますし、やはり、『うーん』って、なっちゃう。なるべく自然にできたら、と思っています」
──芝居が自然で、素のように見えます。
「時代劇だからと言って、あまり構えずにやりたい。だから、僕の素に近くていいのかな、と思います」
──別の取材で慶喜について「自分から離れている感じ」と話していましたが、実際は距離が近いのでは?
「まあ、そうですね。所によって距離があるし、ある所では近いのかもしれない」
──演じやすい役柄?
「あまり考えないです。それが自分のいいところだと思うので、台本も自分のところしか読んでないし、意味が分からないでやってます。『◯◯へ行け!』と言っても、どこのことを言っているのか分からない。そのくらいでもいいんじゃないか。歴史上の人で、ストーリー的には、みなさん、分かっている。だから、あまり余計なことをしないで、内容を半分くらい分かっていればいいんじゃないですかね」
──普通は肩に力が入ってしまって、そういうアプローチはなかなかできないと思います。
「誰かに怒られそうなんですけどね」
──キャリアを重ねた今だからこそ、それができる?
「そうですね。なるべくフラットで、先入観を持たずにやるにはどうしたらいいかな、と考えると、そのくらいの方がいい。あまり頭でっかちにならないで、という感じですかね」
──これまで役者を続けてきて、それがいちばん良いアプローチだと?
「演じ方は、これからまた変わるかもしれない。でも、いろんな作品をやって、つながってきて、これでいいんじゃないかと思ってます。ベストは出さないといけないし、出したい。でも、そんなに考え込んでも逆に動けなくなっちゃうという感じがある。ちょっと抜いた感じでいきたい」
──演じていて楽しいですか?
「それはありますね、やっていて。ワクワクしているというか。ここのシーンはたぶん凄いんだろうな、とか思って、そういうのは楽しいですよね」
──長い大河の撮影で生活の変化は?
「撮影の時は集中しています。さすがに、セリフを覚えないといけない。やはり、友だちと遊べなくなるしね。それは当たり前のことなんで。結構ちゃんと集中してやっています」
──大河が終わったらやりたいことは?
「とにかく、これを乗り切りたい。乗り切るというか、楽しみたい。その先は全然考えていない。慶喜が楽しいから、その気になってやっている感じですかね」
──思い出に残る作品になりそう?
「なると思う。たぶん、終わった時、泣くんじゃないですか。『終わった、大河、終わった!』って」
──それほどですか?
「僕の人生においても大きな物になると思うし、やはりターニングポイントになると思う。この役をやったことによって、次のステップに進みたいと思う。それだけ人生賭けてやっています」
──今後の慶喜にも期待してます。
「ありがとうございます」
ドラマに向かう草なぎは、良い具合に力が抜けている。芝居から気負いが浮き出ていないから、とてもなじみやすい。それは、長年の経験から導き出された独特のアプローチに違いない。そんな力の抜け具合はインタビュー中も同じだった。話が軽やかに流れていく。重い言葉は出てこない。ところが、最後になって「人生賭けてやっています」と明かした。それまでの受け答えからすると違和感すら覚える重さで、少し驚かされた。しかし、それこそが本心であり、慶喜をあのように魅力的に映す要因だと思った。奥底に秘めた覚悟。今後ますます良い芝居を見られそうだ。
◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。