向田邦子賞に「モコミ」橋部敦子さん 忘れられない橋田寿賀子さんの言葉「これからも私の中に残っていく」

2021年04月06日 16:00

芸能

向田邦子賞に「モコミ」橋部敦子さん 忘れられない橋田寿賀子さんの言葉「これからも私の中に残っていく」
第39回向田邦子賞を受賞した橋部敦子さん Photo By スポニチ
 優秀な脚本家をたたえる「第39回(2020年度)向田邦子賞」の選考会が6日に開かれ、テレビ朝日ドラマ「モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~」を手がけた脚本家・橋部敦子さん(54)が受賞した。都内で開かれた会見で、橋部さんは「とてもうれしい。今回のノミネートが3回目。喜びもその分大きくて、ホッとしている気持ちもあります」と喜びを語った。
 同作は女優小芝風花(23)の主演で1月から今月3日まで放送。物や植物の気持ちが分かるという独特な能力を持つ女性を描いた作品。委員会は受賞理由を「物や植物と対話して、自分に正直に生きていく若い女性をためらいなく描いてさわやかな感動がある。周辺の人物もシンプルだが優しい目線で描かれ、作品に幅と統一感をもたらしている」と説明した。

 橋部さんはもともとはダンサー志望だったが、23歳の時にケガをして断念。その時にとある劇団の脚本を書いたことをきっかけに、シナリオライターの道に進んだ。これまでフジ「救命病棟24時」、同「僕の生きる道」などの僕シリーズ、同「ゴーストライター」、同「フリーター、家を買う。」、NHK連続テレビ小説「ファイト」、TBS「A LIFE~愛しき人~」などの作品を手がけてきた。

 「モコミ」は「脚本家として持っていたテーマを完了していいかなと、区切りを付けた作品だった」という。そのテーマとは「自分を受け入れる」ということ。「僕の生きる道」では、主人公が否定していた人生を最後に肯定して一生を終え、「ゴーストライター」では自分嫌いな主人公が最後は自分を好きになる。そうした「自分を受け入れる」ということをテーマに書いた集大成的作品だった。

 向田邦子賞は「雲の上の賞」と思っていたが、2004年に初めてノミネートされて目標となった。13年にも候補となり、今回が3回目。「17年越しの目標で、“今回は頂きたい”と思っていたのでホッとした」と笑顔を浮かべた。

 テレビっ子ではなかったが、向田邦子さんが脚本を書いたドラマ「阿修羅のごとく」(NHK、79~80年)だけは「鮮烈に覚えている」といい、食い入るように見ていた。脚本家となった後に向田さんのシナリオ全集をほぼ読んでおり、「鋭くてあったかい感性。尊敬やあこがれの思いを持っていた」。それだけに向田さんの冠がついた賞を受けた喜びは大きい。

 3日前に部屋の整理をしていて驚いたこともあった。たまたま見つけたメモに「モコミで向田邦子賞を取る」と書いてあったという。いつ書いたものか記憶にないが、まさに有言実行を果たした。「企画の時から賞を狙っていたことが分かりました」とおどけた。

 現在は新たに書きたいテーマを自分に問うため、充電期間に入っている。「いったん真っさらな状態になってる」と明かした。

 4日に脚本家の大先輩である橋田寿賀子さんが95歳で死去。橋部さんは2005年に、橋田さんが理事長を務める「橋田文化財団」が主催する「橋田賞」を受賞している。「ごあいさつをして帰る時に“あなたは明るいから大丈夫よね”と声をかけてくださった。その意味がその時は分からなかったけど、脚本家をやっていれば辛いこともあります。その言葉を思い出して、大丈夫と思える。これからも私の中に残っていくと思います」と目を潤ませた。
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