「流行感冒」本木雅弘 安藤サクラと初共演「もたれ掛かるような気持ち」石橋蓮司と23年ぶり共演に感慨
2021年04月10日 06:00
芸能
脚本は上演台本を手掛けた昨年の舞台「ゲルニカ」が“演劇界の芥川賞”と呼ばれる第65回岸田國士戯曲賞の最終候補作品に選ばれた劇作家の長田育恵氏、演出は連続テレビ小説「花子とアン」、「セカンドバージン」「永遠のニシパ~北海道と名付けた男 松浦武四郎~」などで知られる柳川強氏が務めた。
「流行感冒」は今年1月に撮影。本木にとっては昨年1月に行われた「長良川の戦い」のロケに参加した「麒麟がくる」以来、1年ぶりの演技となったが、神経質な主人公は「ネガティブな想像をしないと先に進めない自分にピッタリの役。その辺は難なく馴染めました」と笑う。
さらに、安藤との夫婦役も久々の演技への“ブランク”を取り除く要因となった。
原作は志賀直哉が千葉・我孫子に住んでいた頃の“半ドキュメンタリー”だが、主人公に名前はなく「私」。本木としても志賀を演じたわけではないが「実際の奥さま(康子=さだこ、武者小路実篤の従妹)はどんな方だったのか気になって調べてみると、神経質な志賀さんによく尽くしたそうで、非常に明るく気品のある方。志賀さんの家庭を知るお仲間たちの印象だと“日本三名夫人”の1人と言われるぐらいの伸びやかさと逞しさがあった人らしいんです。安藤さんがまさにそういう要素を備えているので、自然と凭(もた)れ掛かるような気持ちで夫婦関係が生まれたと思います」
都心を離れた静かな村に住む主人公が東京に出るたびに通う行きつけの居酒屋「とり寅」の主人・寅吉役を演じた石橋とは、1998年公開の主演映画「中国の鳥人」(監督三池崇史)以来の共演。「中国・雲南省のロケで苦楽を共にした石橋さんの味わい深く、チャーミングな姿を久しぶりに拝見できて、非常にうれしかったです」。編集者・根岸役の仲野太賀(28)女中・石役の古川琴音(24)とも初共演となったが「今回のキャスティングは皆さんがハマっていて、物語の世界に違和感なくスッと素直に向き合えました。コロナ禍で警戒態勢での収録でしたが、状況と裏腹に大変心地よい現場でした」と充実の撮影を振り返った。
スタッフが集めた資料の中には、志賀直哉と第29代内閣総理大臣・犬養毅が一緒に写った写真も。犬養毅は安藤の曾祖父。写真を目にした安藤は「ひいおじいちゃまだ」と指さしたという。本木は「後付けかもしれませんが、安藤さんもこの作品に呼ばれるべくして呼ばれたんじゃないかと。集まるべき人が集められる、そういう作品が時々あるんですよね」と今作の“磁力”を感じていた。
【あらすじ】小説家の私(本木雅弘)は、妻の春子(安藤サクラ)と4歳の娘・左枝子(志水心音)、2人の女中・石(古川琴音)きみ(松田るか)とともに都心を離れた静かな村で暮らしている。最初の子を生後すぐに亡くしたせいで、娘の健康に対して臆病なほど神経質である。時は、大正7年(1918年)秋。流行感冒(スペイン風邪)が流行り、感染者が増え始める中、女中の石が、よりにもよって村人が大勢集まる旅役者の巡業公演を観に行ったのではないか、という疑惑が浮上する。私は石を問い詰めるが、石は行っていないと否定。疑念を拭えない私は石に厳しく当たり、左枝子に近づかないよう言いつけるが…。