南波志帆 家飲みの夜に至福のラジオ
2021年05月26日 08:30
芸能
南波は「ヘリウムガスをちょっと吸ったような声なので、コンプレックスだった頃があります。声が高いと、どうしてもぶりっ子っぽく聞こえてしまう。この番組を始めた頃は、夜の時間帯にどうしたらリスナーに受け入れてもらえるだろうかと試行錯誤しました。説得力を持って話せるように、声のトーンを下げてみたりもしました」と明かす。
番組のDJに就任したのは2015年で、当時21歳。それから6年の歳月を経て、声の質が変化した。
「23歳、24歳くらいからだいぶ落ち着きました。昔は高音域しかなかったけれど、だんだん中音域と低音域が足されてきた感じです。17歳の頃はどんどん声が高くなっていて、このまま行ったら超音波になって人間に届かなくなってしまうんじゃないかと心配していましたが…」
今は夜の放送に最適な感じ。高過ぎず、低過ぎず、ほどよく耳になじむ。しかも、話し方が緩やか。緊張感や高揚感が漂いそうなゲストコーナーでもほとんど変化しない。聞いているうちに自然に心が安らぐ。
「ついつい、ゆっくり話してしまう癖があります。普段からこんな感じで、あまり緊張しないタイプなんです。母から『誰に対してもフラットで』と教えられていたので、どんな時にも凪(なぎ)のように一定なのかもしれません。ラジオならではの親密さが好きなので、一人一人に語りかけるような気持ちで話しています」
毎回のゲストコーナーで光るのが、ゲストの楽曲を聴いた後の感想だ。例えば、5月20日の放送。いきものがかりの「ええじゃないか」が流れ終わると、メンバーに「ふつふつとした情熱がわき上がってくるような、迷いのない、あざやかな美しい曲ですね。潔くて、格好良くて、すてきでした」と伝えた。各ゲストの各曲に対する感想がいずれも通り一遍ではなく、どれも詩的に聞こえる。
「番組の前に曲を聴き込んでいます。かける曲が事前に分からない場合はアルバムに入っている曲を全部聴きます。1曲について少なくて5回くらい。浮かんだ言葉は全てノートに書きとめます。これまで1400組以上のゲストを迎えていて、ノートは12冊くらいになりました。最近は『南波さんの感想を聞きに来ました』と言ってくれるゲストも増えました」
南波本人がアーティストだからこそ、ゲストがDJに何を求めているかが良く分かる。常に音楽と真剣に向き合い、人と真剣に向き合うこと。この番組を聴いていて心地いいのは、何よりも、それが達成されているからだろう。
「努力しているつもりはないんです。とにかく楽しい。最新の音楽シーンを把握できて学ぶことも多いです。番組では真面目な音楽の話もしますが、くだけた話もたくさんします。リスナーの親友のようなポジションで、いろんな音楽を伝えていきたい。魅力的な音楽を魅力的に伝えたいと思っています」
家飲みの夜は長引きそうだが、楽しみは続きそうだ。
◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。