古舘伊知郎 新著「MC論」で明石家さんまに吉本入りを止められた過去明かす
2021年07月19日 10:00
芸能
古舘は「テレビが社会を映す鏡と言われて久しい。昭和、平成、令和と世の中の模様が変わり、MCのたたずまい、ありようも変わった。自分もたどってきた昭和からの流れを総ざらいしてみたいと思った」と執筆動機を明かす。
取り上げたのは計23人。いずれも仕事で何らかの接点があった人々だ。
「深い、浅いは別にして、みんな会ったことのある人。事務所NG、本人NGで、カットしたのが4、5人いる。だから、これは『MC寸止め論』」と冗談まじりに話す。
知人が対象のため、交遊録の色合いも濃い。例えば、明石家さんまの章では、テレビ朝日のアナウンサー時代に吉本興業東京支社長(当時)から勧誘され、さんまに相談した逸話を明かしている。
「プロレスの実況でブレークした27歳くらいの頃の話。吉本興業東京支社長に『ジャンルを広げていきたい』と誘われた。それで有頂天になって、テレ朝の廊下でたまたますれ違った、さんまちゃんに『お誘いを受けたが、どうしたらいいですかね?』と相談してみた。すると、さんまちゃんは即座に『やめなはれ』とひと言。『ギャラのほとんどは事務所に持ってかれまっせ』ということだった。半分はネタだったろうが、結果的に行かなくて良かった。行っていたら『報道ステーション』は絶対にやらなかったと思う」
全章を書き上げて感じたのは、町の変貌ぶりとテレビの変貌ぶりの同一性だという。
「昭和の時代には、お母さんが買い物籠を持って商店街を練り歩き、欲しいものをそろえた。今はへたするとスーパーに行かなくてもコンビニでほとんどのものがそろってしまう。テレビも『総コンビニエント』。消費者に、消費してもらおうと思って作っているから、コンビニのような品ぞろえになる。テレビを見て『どの番組も一緒』と言う人がいるが、コンビに行って『どの店も一緒』と言う人はいない。町の変遷がMCの変わりようににじんでいる」
個性豊かな23人を取り上げた、この著書にもコンビニのような多様性がある。
「書店に行ったら、コンビニのレジの近くに置いてある大福のように、この本をついでに買ってほしい」と訴えた。