さだまさし 19年ぶりラジオレギュラー 「持っているものをできるだけ送る」
2021年09月30日 09:00
芸能
「やれる状況ではなかったというのがある。しゃべると興奮して大声を出すから、のどを痛めるきっかけになったりしていた。『セイ!ヤング』をやっていた頃、ガサガサの声でコンサートをやったこともあったので、ラジオを控えていたところがある」
──最近はNHK「今夜も生でさだまさし」で、テレビで話す人のイメージが強いが?
「ラジオの言葉のデータ量は、テレビの5倍くらいある。ラジオは見えないから、言葉だけがデータで、かなり多くの量を送らないと、面白いと思ってもらえない。聞いている人は、そのデータで映像などを構築する。それが魅力で、それをやりたいと思った。ラジオの良さは臨機応変にできること、自由にできること。しゃべりがいがある」
──番組のアシスタントを務める寺島尚正アナウンサーとは?
「寺ちゃんとは20年、30年のコンビなので、彼は僕のことを全部分かってくれている。ノーサインで投げられるキャッチャーみたいなもの。何を言っても受けてくれる」
──テレビで話すのとは違う?
「テレビはカメラに向かって話すが、ラジオはここ(スタジオのマイク周辺)で話す。テレビはハガキもカメラに向かって読むが、この番組は今思っていることを寺ちゃんに伝えればいい。彼は感じたことを投げ返してくれる。テレビはキャラクターで、ラジオはパーソナリティー。キャラクターは演じることができるが、パーソナリティーは演技をすると、必ず、ばれる。だから、ラジオは怖い」
──抱負は?
「自分が持っているものをできるだけたくさん送る。自分の記憶、知識、ノウハウを圧縮して、ガーッと送る。この番組は30分だが、45分番組、1時間番組くらいのものを送りたいと思う。ラジオ好きは、圧縮されたデータを解凍する能力が優れている。必ず自分の頭の中で解凍して、面白がってくれる」
──番組では「次世代に歌い継ぎたい曲」を流し、その曲やアーティストにまつわる逸話や当時の時代背景などを語っていく。
「おっさんが思い出話をしているだけに聞こえる人もいるかもしれないが、1960年代、70年代、僕の青春時代の名曲がどれほど歴史的に大切かということを訴えたい。今の価値観、今の音楽にちょっと納得できていない人、もうちょっと音楽に踏み込んでみたい人は、ぜひ聞いてほしい。今の音楽にはないものをお聞かせする。これが正しい、あれは間違っていると言うのではなく、こういうものがある、こういう魅力があるということを伝えていきたい」
──歌とラジオは?
「歌はラジオ的ワールド。歌詞から色や温度、気配、風を受け、それを解凍して、自分の中でそしゃくして味わう。全くラジオと同じ」
この番組は、日本のフォーク、ロックを愛好してきた人たち、さだのファン、昔の音楽に興味を抱く若い人たち、そして、ラジオ好きの人々に、至福のひとときをもたらす。
◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。