プロ注目!昌平・吉野創士 特殊ティー打撃&「野村イズム」で高校通算56発 祖父との約束「プロ」誓う
2021年10月09日 10:00
芸能
そんな才能をどう磨いたのか。その秘密は練習にあった。吉野のティーバッティングでは、変化球の対応を身につけるためにボールをワンバウンドさせたり、真横、真後ろからボールを投げるなど、様々な種類のティーバッティングで実戦での対応力を磨いた。さらに筋力トレーニングも欠かさなかった。スクワットは自身の体重の倍の重さ150キロのバーベルを持ち上げ、入学当初40キロしか上がらなかったというベンチプレスは100キロを上げるまでに進化し、体脂肪率は驚異の3・5%だ。
吉野が鍛えられたのは肉体だけではない。黒坂監督から「野村イズム」も教え込まれた。社会人野球の強豪SHIDAXの主力選手としてプレーした黒坂監督。当時の監督はID野球で一世を風靡し、ヤクルト監督時代に3度の日本一を果たした名将・野村克也氏。野村氏から確率を重視してワンプレーへの事前の準備をする大切さなどを叩き込まれた。
そして黒坂監督は野村氏から、もう一つ受け継がれたものがある。それは人生観から成功哲学、ポジションごとの技術論まで野村氏の考え方が詰まっている野球の参考書「野村ノート」だ。その内容を黒坂監督は「私なりにアレンジして選手たちに伝えている」。その中で、吉野が学んだのは野球に対する姿勢。「自分の何が悪いのかを徹底的に考えて練習に臨んでいる」と、常に考えながら練習に取り組んでいる。
頭脳と肉体、2つを手に入れた吉野は高校生で独自の打撃理論を持つまでに成長。「バットをフルスイングするんじゃなくて、下半身。股関節をフルスイングするイメージ。股関節さえ速く回せばバットがついてきて、その遠心力で持っていくイメージ」。下半身を鋭く回転させ、体全体をムチのようにしならせることで強い遠心力を生み出す。この独自のフォームで高校通算56本の本塁打を放ち、プロ注目の強打者へとなった。
夏の埼玉大会後にプロ志望届を提出した吉野は、ドラフト1カ月前に帰省。目的は5年前に亡くなった祖父・忠雄さんの墓前に報告するため。吉野は忠雄さんが亡くなる2日前に「お前はプロに行って活躍する選手になってくれ」と伝えられた。祖父の最後の願いを託された吉野は「おじいちゃんと約束したプロっていう世界の入り口に立とうとしてるっていうのもあるので祈っててほしいと念じました」と、ドラフト会議を心待ちにした。
果たして吉野の名前は呼ばれるのか。そして天国の祖父へ吉報を届けられるのか。運命のプロ野球のドラフト会議まで、あと2日。