大倉孝二 大河「青天を衝け」大隈重信役の「であ~る」の味
2021年10月15日 08:00
芸能
大倉は「あのシーンは最初から最後まで全部通してやったので、緊張感があった。僕の必死さが表れていたと思う。『である』が大隈の口癖だったのは知っていた。監督から『際立たせて欲しい』と言われ、これでいいのかと思いつつ、探り探りやらせてもらった。必死だった」と明かす。
あの場面の途中、「種のまき直しなのであ~る」というセリフがあったが、最後の「あ~る」の部分が繰り返される編集が施されていた。
大倉は「ああいう編集になると知らなかったので驚いた。『なんじゃこれは!?』と思った。僕の至らない部分を補ってくださったのだと思う」と笑う。
あの場面で渋沢は新政府入りを決意。大隈の説得が功を奏するという展開に大倉の熱演が現実味を持たせる形となった。
「吉沢君の心を動かすことに尽力した。目の前の吉沢君に伝わらなければ、見ている人にも伝わらないと思い、それだけを必死にやろうと心掛けた。細かい演技でどうこうできるほど演技力にたけた俳優ではないので、熱量を信じた」
大隈は、のちに早稲田大学を創設し、首相になる。
「率直に言って、自分で大丈夫なのか、と思った。史実に基づいたフィクションであるにしろ、大隈さんにいろいろな思いを持っている人がいる。ただ、調べたら、面白いエピソードが多かった。大隈と伊藤博文が囲碁か将棋をした話で、伊藤はじっくり、しっかりと手を進めるが、大隈は割りと大ざっぱで、ピンチになってから対処するという記述があった。そこに親近感を覚えた。天真らんまんなところがあって民衆に愛されたとも書かれていた。立派な役柄はやれるかどうか怪しいが、それならば自分でもできそうだと思った。ある意味でザックリしているところにシンパシーを感じる」
明治政府の緊迫した状況の中で、大隈と渋沢は関わり続けていく。
「恒例のように、渋沢との言い合いが出てくる。『である』とも言う。おなじみみたいな感じで楽しんでいただければ」
今後、どのような形で「であ~る」が飛び出すのか、注目したい。
◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。