「おかえりモネ」脚本・安達奈緒子氏 百音&未知の答えにラスト託した「最後は希望を」痛みと再生の物語
2021年10月16日 08:15
芸能
第20週(9月27日~10月1日)から最終章となる第3部「気仙沼編」に突入。百音は故郷・気仙沼の亀島に戻り、地域密着型の気象予報士にチャレンジ。しかし、雨不足に悩む農家の女性らに有効な解決策を示すことができず、自然を相手に無力さを痛感している。結婚を決めた医師・菅原(坂口健太郎)は登米から東京に戻り、離ればなれだが、信頼関係は微塵も揺るがない。
一方、百音の妹・未知(蒔田彩珠)は地元の水産試験場に残り、家業のカキ養殖も手伝うか、研究に誘われている東京国際海洋大学のAO入試を受けるか、逡巡している。その最大の要因は、想い続けている幼なじみの漁師・亮(永瀬廉)との関係。いつも「大丈夫」と心を開いてくれなかった亮だが、船が難破しかけ、無事生還した後に「オレ、幸せになってもいいのかな」と吐露。ようやく一歩、距離が縮まった。
「生きてきて、何もなかった人なんていないでしょ。何かしらの痛みはあるでしょ」――。内田(清水尋也)の言葉(第78回、9月1日)に象徴されるように、登場人物それぞれが抱える「痛み」と「葛藤」を時に残酷なまでに、そして、その「救い」と「再生」を背中をさするように“手当て”しながら丹念に紡ぎ上げてきた。ハッシュタグ「#俺たちの菅波」が生まれるなど、連日、関連ワードがツイッターのトレンド入り。SNS上で反響を呼び続けた物語も、ついに2020年1月に突入。どのような未来が百音たちを待ち受けるのか。
――東日本大震災を背景としたドラマを描くにあたり、どのようなことを考えられましたか?
「東日本大震災を背景にドラマを描く、ということについては、おそらくこれから先もずっと考え続けると思います。正解は見つけられないと思いますし、正解を見つけようとすること自体が違うのではないかとの考えもあります。ですが『その人の苦しみは、その人でなければ絶対に理解できない』という大前提から始めて、話を聞き、考えて得た震災に対する『伝えたい思い』は提示すべきだろうと。チームにそれをお話しして、それぞれのお考えも聞きました。現場は最後の最後まで力を尽くしてくださいました。当然のことながら提示したものが、すべての人に受け入れられるとは考えていません。ご協力いただいている宮城の皆さまの思いもうかがいました。その上で、自然との共生や『痛み』について描いてきたこの物語の帰結をどのように表現するかを決めました。百音と未知が出した答え、耕治さんと新次さんが出した答えに、それを託しています」
――ドラマは残り2週間となりました。視聴者の皆さんへメッセージをお願いします。
「ここまで見てくださって本当にありがとうございました。心から感謝しています。受け止めてくれる方がいなければ物語は成立しません。どんな受け止め方もあってよいと思います。ですが、やはりほんの少しでも、優しい気持ちや胸が熱くなるような感覚を抱いてもらえていますように、と願ってしまう自分がいます。誰もが以前よりも苦しい日々を過ごされている中で、最後は希望を感じていただけるように書いたつもりです。そしてチームの皆さまが、それをより力強く表現してくださっています。あと少しとなり、わたしはとにかく寂しくてたまりませんが、最後までおつきあいいただけると嬉しいです」
◆安達 奈緒子(あだち・なおこ)2003年、「僕らの未来に子供たちはイエスと言うか」で第15回フジテレビヤングシナリオ大賞を受賞。翌04年、フジテレビのスペシャルドラマ「冬空に月は輝く」で脚本家デビュー。「大切なことはすべて君が教えてくれた」「リッチマン、プアウーマン」「コード・ブルー―ドクターヘリ緊急救命―3rd season」などのフジテレビ“月9”ドラマを担当。19年にはテレビ東京「きのう何食べた?」、NHK「サギデカ」、TBS「G線上のあなたと私」と3本の連続ドラマを手掛けた。11月3日には最新作の映画「劇場版 きのう何食べた?」が公開される。
=おわり=