「おかえりモネ」歌なんか…の新次が「かもめはかもめ」脚本・安達奈緒子氏が託した思い トレンド入り反響

2021年10月20日 08:15

芸能

「おかえりモネ」歌なんか…の新次が「かもめはかもめ」脚本・安達奈緒子氏が託した思い トレンド入り反響
連続テレビ小説「おかえりモネ」第113話。美波の死亡届に判を押す新次(浅野忠信)(C)NHK Photo By 提供写真
 女優の清原果耶(19)がヒロインを務めるNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」(月~土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)は20日、第113話が放送された。俳優の浅野忠信(47)が好演している元カリスマ漁師・新次が、最愛の妻・美波のカラオケの十八番「かもめはかもめ」を口ずさんで涙し、震災からの年月に一つの区切り。脚本の安達奈緒子氏が書面インタビューに応じ、名曲に込めた思いを明かした。
 <※以下、ネタバレ有>

 放送終了後(午前9時)には「新次さん」がツイッターの国内トレンド3位、「美波さん」が34位、研ナオコ(68)の名曲「かもめはかもめ」(1978年発売、作詞作曲・中島みゆき)が37位に入るなど反響を呼んだ。

 朝ドラ通算104作目。清原とタッグを組んだNHK「透明なゆりかご」などやテレビ東京「きのう何食べた?」などで知られる安達氏が手掛けるオリジナル作品。朝ドラ脚本初挑戦となった。タイトルにある「モネ」は主人公・永浦百音(ももね)の愛称。1995年に宮城県気仙沼市に生まれ、森の町・登米(とめ)で青春を送るヒロイン・百音が気象予報士の資格を取得し、上京。積み重ねた経験や身につけた技術を生かし、故郷の役に立ちたいと奮闘する姿を描く。

 朝ドラ初出演となった浅野が演じるのは、百音の幼なじみ・亮(永瀬廉)の父・及川新次役。百音の父・耕治(内野聖陽)とは幼なじみの親友。百音の母・亜哉子(鈴木京香)が産気づいた時には、嵐の中、船を出して亜哉子を本土へ運び、赤ん坊(百音)の命を守った。

 カリスマ的な漁師だったが、東日本大震災で新しく造った船を失い、最愛の妻・美波(坂井真紀)は行方不明に。2011年10月、耕治は新次に「とにかく、おまえ船を買え。買うために船乗って、金を稼げ」「船、持てよ、もう一度。おまえには船が似合うよ」と勧めたが、融資は通らず。親友の間には溝が生まれ、新次は立ち直るきっかけをつかめずにいた。

 16年1月。亮がメカジキ50本を揚げたが、喜びを分かち合える相手がいない。再び酒に手を出し、かつて自宅があった場所で酔いつぶれたが、無事発見。永浦家に連れてこられ、どうにもならない苦しさを打ち明けた。

 「5年って長いですか。おまえ、まだそんな状態かよって、あっちこっちで言われるんですよ。でもオレ、何でか、もうずーっとドン底で。オレ、何も変わらねぇ。(亮の成長について)しゃべる相手が…話す相手がいないんだ。ホントだったら一杯飲みながら、一緒に親バカだなって言い合える、美波がいないから…。(美波が大好きだった『かもめはかもめ』を歌う亮に)オレは歌なんかで誤魔化されねぇからよ。オレは立ち直らねぇよ。絶対に立ち直らねぇ!」

 16年8月。大型の台風8号が宮城県に近づき、耕治は新次に亀島の船の避難を要請。新次は耕治の「船やられるの、黙って見てられねぇのは、おめぇの方だろ」という“殺し文句”にほだされた。亮は百音に「親父が船、乗った。耕治さんが親父をつれ出してくれた。島の船、台風から避難させるの手伝ってくれって、家まで来て頼んでくれた。島の船も全部避難できた。ホントよかった」と喜びのメッセージを送った。

 16年11月。新次は永浦家を訪れた美波の母・フミエ(草村礼子)と再会。フミエは「私も82よ。もう、いつどうなっか分かんない。自分が向こうに行くならね、ちゃんと向こうで美波と会いたいと思って」。美波の死亡届を提出し、葬儀を執り行ってほしいと頼まれると、受け入れ難い新次はまたも酒に手を出して荒れてしまい、警察も出動。駆けつけた耕治と突き飛ばし、アルコール依存症の治療にも付き添ってくれた亜哉子も前に「来んなよ!何度も何度もよ!何が向こうだよ!あのハンコ押したら、オレがこの手で美波をよ!」と叫んだ。

 そして、この日の第113話は20年1月5日。耕治(内野)は新次(浅野)と亮(永瀬)に2人で話すよう促し、部屋を出る。亮は「親父に船、乗ってほしい。親父を元に戻すことがオレの生きてきた目的だよ」と訴え、新次も「それでは、おめぇの人生でねぇだろ。オレが漁師やるっていうのは、美波がいるのが大前提でな。どうしたってそれが叶わねぇなら、オレが海で生きんのは、あの日で終わりにしたい。だから、オレは船には乗らねぇ。おめぇは自分の船でやりたいようにやれ。オレがそれ見てるよ。オレはそれだけで十分だから」と吐露。そして新次は、耕治をはじめ、百音(清原)未知(蒔田彩珠)亜哉子(鈴木)龍己(藤竜也)が見守る中、亮が船を買う資金のために提出する美波(坂井)の死亡届に向き合い…という展開。

 耕治は「(ハンコを押しても)(全部)なかったことになんか、なるわけねぇだろ。新次、おめぇは幸せになっていいんだよ」と新次の背中を押す。ハンコを手に取った新次の口から出たのは「かもめはかもめ」。歌い終わると「ありがと。さよなら」と判を押し、むせび泣き。亮は「親父、これは持ってろ」と美波の声が留守番に残るガラケーを手渡した。

 「かもめはかもめ」は第37話(7月6日)、在りし日の美波がカラオケで歌うシーンに登場した。

 安達氏は「もともと、とても好きな歌でした。愛する人を思いながら、それでも自分は離れてゆかなければならない。悲しくて寂しいけれど、どこか自分の生き方に誇りを持っているような、そんな歌詞がとても好きでした。新次さんは携帯電話に残された美波さんの声を生きる支えにしていて、絶対に手放したくない存在の象徴があの携帯電話です。けれど、そこに固着していては新次さんはずっと苦しい。手放さなくてもいい、いつかほんの少しでも心を緩めてもらいたい、そう思った時に『もう電話もかけない』と始まるこの歌詞に、新次さんと美波さんの2人の気持ちを託せないかと考えました。『歌なんか』(で誤魔化されねぇからよ)と言っていた新次さんですが、美波さんの『歌』はやっぱり最後に彼の背中を押すものだったと思っています」と新次の救いと再生の物語を紡ぎ上げた。
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