漫画家・白土三平さん死去、89歳 「カムイ伝」などで60年代ブーム
2021年10月27日 05:30
芸能
身分制度の最下層で運命にあらがう忍者の主人公らの姿を描いた同作は若者の心をとらえ、60年代の学生運動に影響を与えた。イデオロギー色の濃い作風は少年漫画のあり方の根本を変え、手塚治虫が「白土三平の登場で、子供漫画に重厚なドラマ、リアリティー、イデオロギーが要求されるようになった」と評したほど。
60年代後半には白土ブームに包まれ、67年のサンデー毎日による特集「いい感じの日本人」では吉永小百合、三島由紀夫らを抑えて1位に。翌68年には「サスケ」がアニメ化。「巨人の星」などスポ根アニメがヒットする中、主人公の少年忍者が子供たちの人気者になった。
一方で、60年代後半には体調を崩し、療養で千葉の漁村に転居。自然の中での暮らしをエッセーにすることもあったが、晩年は執筆活動から離れていた。73年発表の人気漫画「釣りキチ三平」の主人公、三平三平(みひら・さんぺい)は白土さんの名前に由来。ドラマ性が求められる現在の漫画ブームに多大な影響を与えた先駆者だった。
白土 三平(しらと・さんぺい)本名岡本登(おかもと・のぼる)。1932年(昭7)2月15日生まれ、東京都出身。51年、紙芝居シリーズ「ミスタートモチャン」の制作をスタート。57年に漫画家デビューし、貸本で発表した「忍者武芸帳・影丸伝」で人気を確立。「カムイ伝」シリーズは累計1500万部以上を売り上げた。