「おかえりモネ」時計代わりにならず?朝ドラの見られ方に変化か 配信好調 作品性高くSNS洞察呼ぶ
2021年11月01日 14:30
芸能
番組最高は初回(5月17日)の19・2%で、前作「おちょやん」に続いて大台20%には一度も届かず。全120話の期間平均は16・3%で、「おちょやん」の17・4%を下回った。
2作連続して大台超えがなかったのは2008年後期「だんだん」(番組最高18・7%)→09年前期「つばさ」(番組最高17・7%)以来12年ぶり。期間平均17%を割ったのは09年後期「ウェルかめ」の13・5%以来、約12年ぶりとなった。
「地味」「暗い」「朝ドラ向きじゃない」などの声もあったが、SNS上の反響は大きく、関連ワードが連日、ツイッターのトレンド入り。俳優の坂口健太郎(30)が好演した医師・菅波についてつぶやく際のハッシュタグ「#俺たちの菅波」が自然発生。百音、菅波、未知(蒔田彩珠)、亮(永瀬廉)の“四角関係”を描き始めた第15週「百音と未知」(8月23~27日)から一層、盛り上がった。データ分析会社「CINC(シンク)」(東京都港区)の調査によると、「#俺たちの菅波」の出現数は7月度=5830、8月=6万3790、9月=19万170と飛躍的に増えた。
同局の発表によると、NHKプラスのサービス開始以来、最も多く見られた朝ドラに。百音と菅波の気持ちが通じ合った第80話(9月3日放送)が、歴代朝ドラのうち最も多く見られたエピソードとなった(同時と見逃し配信7日間)(10月28日現在)。
NHKオンデマンドも、第80話が今年度に有料配信したNHKの全番組のうち、最多視聴数を獲得(10月28日現在)。SNS上の盛り上がりに伴い「おかえりモネ」を初回から見るため加入者が増加した。
脚本の安達氏が東日本大震災を背景に「人の痛み」と誠実に向き合い、見る者の心を静かに突き動かし続けた。「当事者と第三者」「土地を離れるか、離れないか」「若き者たちへのエール」など、今作には多様なテーマがあったが、通奏低音となったのが「痛み」。「生きてきて、何もなかった人なんていないでしょ。何かしらの痛みはあるでしょ」――。百音の同僚の気象予報士・内田(清水尋也)の言葉(第78話、9月1日)に象徴されるように、登場人物それぞれが抱える「痛み」と「葛藤」を時に残酷なまでに、そして、その「救い」と「再生」を背中をさするように“手当て”しながら、安達氏が丹念に紡ぎ上げた。
チーフ演出の一木正恵監督も同局「note」に「リアルタイム視聴にこだわらない層が多くなるにつれて、より作品性が重視され、何度でも見たい、何度見ても発見がある、深く洞察できるドラマが求められる」「伏線が回収されたり、何かの結果が出たりした後で、もう一度見直すことが可能な今だからこそ、『おかえりモネ』は第1・2週において主人公・百音の過去をほとんど描かず物語を進行するという構成にも挑戦しました」「私たちコンテンツ制作者も、同じ時間を奪い合う視聴率という指標と共に、大切なのはなぜドラマを作るのか。それは究極的には、人の心を動かすため。人に生きる喜びを感じてもらうため、人の生きる活力となるためであろうと思います」などと思いを記した。
朝ドラの視聴のされ方の変化が、近年多かった朝ドラの王道パターン「偉業を成し遂げる女性の一代記」とは完全に一線を画す作品へのチャレンジを後押しした。