ジョーカーも笑ってられないあきれた蛮行
2021年11月04日 14:44
芸能
世間を騒然とさせる映画は時に現実社会にも影響を及ぼすことがある。1963年3月31日に東京で起こった4歳児誘拐、いわゆる「吉展ちゃん事件」の犯人は、エド・マクベインの小説「キングの身代金」をもとに映像化した黒澤明監督の「天国と地獄」(63年3月1日公開)をヒントに犯行を思いついたとも伝わっている。
ふつうは逆。実話をベースに製作されることが多い。国内だけに限ってもそれこそ数えきれないくらいの映画が作られてきた。骨太の社会派作品を手掛けてきた熊井啓監督が代表格といえるだろうか。「帝銀事件 死刑囚」(64年)、「日本の熱い日々 謀殺・下山事件」(81年)、遠藤周作氏の小説を題材に、米軍捕虜への臨床実験に迫った「海と毒薬」(86年)、松本サリン事件をテーマにした「日本の黒い夏―冤罪」(01年)などが知られる。
今村昌平監督の「復讐するは我にあり」も63年から64年にかけて5人が殺害された西口彰事件を題材に佐木隆三氏が書いた小説を映画化したもの。10年公開の「冷たい熱帯魚」(監督園子温)は93年の埼玉愛犬家連続殺人がベース。13年公開の「凶悪」(監督白石和彌)は、ある死刑囚の告発で明らかになった上申書殺人事件が題材だ。昨年封切られた大森立嗣監督(51)の「MOTHER マザー」も14年に埼玉県で起こった少年による祖父母殺しに着想を得た1本。母親がそそのかしたのかどうかが争点になった事件だ。
挙げてゆくとキリがないが、その逆、映画に触発されて事件が起こりうることを改めて気付かせてくれたジョーカー男のケースだった。