「カムカムエヴリバディ」上白石萌音 演出側は「ドキュメンタリーを撮った感じ」
2021年11月10日 08:15
芸能
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演出の安達もじり氏は「台本では、通常の位置にあった。編集作業の中で、安子の気持ちをたどっていった時、そのまま見たくなる感覚があった。大阪と岡山の距離感をどうやって出そうかと悩んでもいたので、安子が大阪を出たらタイトルバックを入れる編集を試してみたら、意外に良かった。朝ドラのフォーマット上、可能なのか確認しながら、あのような形にした」と明かす。
見た印象としては劇的で、いつもと同じ15分の朝ドラながら、短編映画を見終わった後のような充足感を得た。
何より、特筆すべきは、上白石の表情の良さだ。派手な表現ではなく、静かに、じわりと動かす芝居が秀逸。この日の放送だけではなく、上白石の表情の変化がこの朝ドラの見どころの一つになっている。
安達氏は「上白石さんは凄い。芝居の域を超えて、安子として生きている感じがした。物語の世界観をセットやロケで作り込んだので、上白石さんには『そこで伸び伸びと生きてくだされば、それを撮らせていただきます』と伝えていた。それをそのまま体現してくださった。どのシーンにもそれを強く感じる。ドキュメンタリーを撮るような感じで撮らせていただいた」と話す。
上白石は安子を演じているのではなく、自身と安子を同化させているように見える。本人は安子との類似点について「熱中すると、それ1本になるところ。決定的に違うのは、私はそれが長続きしないこと。安子はずっと好きでいられる子なので、そこは、いいな、と思います」と笑うが、同化具合が極めて良い。
上白石の主演は、キャスティングではなくオーディションで決まった。制作統括の堀之内礼二郎氏は起用理由について「安子は素直でピュアで普通の子だが、上白石さんは役柄への理解やパフォーマンスが最も素晴らしかった。そして、最初にドラマを引っ張る華としての魅力があった」と説明する。
上白石は昭和の時代のヒロインを演じることについて「現代劇よりも昭和以前の役の方が個人的にしっくり来ます。私は『昭和っぽい』と言われることも多いんです。その時代になじむように、ということは意識しませんでした」と話す。
上白石の芝居を見ていて心地いいのは「自然な演技」ではなく「自然な動き」だからだろう。
◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。