「恍惚の公開!」の宣伝コピーに偽りなし
2021年11月22日 15:25
芸能
「イワタ」という法務中尉役に起用されたのが内藤。軍律会議の審判官として英国陸軍少佐を裁くが、この少佐を演じたのが世界的ポップスター、デヴィッド・ボウイだった。
撮影前日はプレッシャーでほとんど眠れなかったと内藤が大島監督に明かすと、「あっ、そう。僕も」と、思わぬ答えが返ってきたという。「君とデヴィッド・ボウイさんが芝居するんだろ。僕だって緊張する。眠れるわけないだろ」と…。
いま見直しても妖(あや)しい色気に立ちくらみしそうだ。映画が公開された83年はボウイ36歳。その10年前に撮影されたドキュメンタリー映画が生誕75年となる2022年1月7日から東京・渋谷のBunkamura ル・シネマを皮切りに、同28日からのアップリンク吉祥寺など順次全国で公開されていく。
ボウイは72年から73年にかけて英国、米国、日本をツアーで巡った。その最終公演、ロンドンのハマースミス・オデオン劇場での伝説的なライブを収めた「ジギー・スターダスト」(監督D・A・ペネベイカー)がその一編だ。
1972年6月に発売され、ボウイを一躍スターダムに押し上げた名盤がベース。5年後に滅びようとする地球に異星からやって来たスーパースター(ジギー=ボウイ)を主人公に壮大なスケールでステージが展開する。「君の意志のままに」から「ロックン・ロールの自殺者」まで17曲をボウイが歌い、語り、踊っている。パントマイムも見どころだ。
バックステージには当時の妻、アンジェラやリンゴ・スターの姿。衣装チェンジで楽屋に戻ってくるボウイがふつうに紫煙をくゆらしている場面も時代を感じさせる。衣装を担当したのは、当時27歳の山本寛斎だ。
劇場公開は2017年以来5年ぶりとなるが、16年に他界したボウイだけでなく、全曲歌詞の翻訳字幕を手掛けた寺尾次郎が18年に、ペネベイカー監督が19年に、そして衣装の山本が20年に相次いで世を去っている。生誕75年、名盤(「ジギー」)誕生から50年の節目。携わった人たちへの追悼も兼ね、5年前とはまた違った意味合いで見えてくる。配給はオンリー・ハーツ。(一部敬称略)