市民や道民は本当に「札幌五輪」を望んでいるか

2021年12月28日 15:45

芸能

市民や道民は本当に「札幌五輪」を望んでいるか
“日の丸飛行隊”(左から)銅メダル・青地清二(20)、金メダル・笠谷幸生(45)、銀メダル・金野昭次(5) Photo By スポニチ
 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】声優やミュージカル女優として活躍した神田沙也加さん(享年35)の人生終焉(えん)の地となった北海道札幌市。道内ではいまなお衝撃が尾を引いているが、その一方で札幌市は2030年の冬季オリ・パラ招致に向けて動き出している。既に11月29日に大会概要も発表済み。開催経費を当初試算していた3100~3700億円から2000~3000億円に削減するとアピールしていた。
 1972年に続いて2度目の開催を目指すが、21年夏の東京大会が「立候補ファイル」提出の段階で7340億円としていた経費が1兆4530億円に膨らんでしまった(見方によっては3兆円説も)こともあり、果たして市民や道民の支持は得られるのだろうか。市は春に行う意向調査の行方を見極める予定という。

 先の札幌五輪はよく覚えている。笠谷幸生、金野昭次、青地清二の日の丸飛行隊がジャンプ70メートル級(現ノーマルヒル)で表彰台を独占。半世紀前の歴史的快挙だった。女子フィギュアでは米国のジャネット・リン選手=当時(18)=が“銀盤の妖精”と呼ばれて人気を集め、銅メダル獲得に筆者も小躍りしたものだ。

 新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の感染拡大が懸念される一方で、年が明けると冬季北京大会が目前に迫る。中国の人権侵害を問題視する米国が式典などに政府代表を出席させない外交的ボイコットを決定。オーストラリア、英国、カナダなども追随し、今後さらに広がる可能性も否定できない。

 新疆ウイグル自治区や香港での市民弾圧。加えて張高麗元副総理(75)に性的関係を強要されたと告発した女子テニスの彭帥(ほうすい、35)選手の一件が影を落とす。その後、当人は「強要はなかった」と打ち消しに転じたが、それも中国政府に命じられたものではないかと、ついつい勘繰ってしまう。

 ツアーを統括する女子テニス協会(WTA)は中国での大会見合わせをいち早く発表したが、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長(67)は逆に醜聞の火消しに躍起。「政治的中立」を強調してこそいるが、彭帥選手とテレビ電話で会話している画像を発信するなど、中国サイドに寄った態度に終始している。

 21年の新語・流行語大賞でも「ぼったくり男爵」がトップテン入りするなど負のイメージが先行する人だが、よもやチャイナマネーをがっぽりと袖の下に隠していたりはしないだろうが…。

 中国への肩入れが度を越せば西側のさらなる反発も必至だ。日本は閣僚や高官による政府代表団の派遣を見送り、一応は米英などと歩調を合わせた形。東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の橋本聖子参院議員と日本オリンピック委員会の山下泰裕会長、パラリンピックには日本パラリンピック委員会の森和之会長が出席すると発表した。

 バッハ氏の会長職の任期は25年までで、30年の開催地を決める23年の総会には会長として臨む。日本は「札幌」のために顔色をうかがってばかりいては今後の立ち位置が余計難しくなりそうだ。
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