「カムカムエヴリバディ」ヒロイン 懐かしの「私の秘密」出演の効果
2022年01月06日 08:15
芸能
演出した松岡一史氏は「実際に番組のセットを作ってもらった」と説明。NHKには「私の秘密」の古い映像も残されているが「既存の映像にはめ込むより、セットの中の世界で演じてもらった方が面白いのではないかと考えた」と話す。
「私の秘密」は1955年から67年まで放送され、テレビ創世記のバラエティーの原点とも言われる番組。毎回、珍しい体験や特別な才能など「秘密」を持つ人が登場し、解答者が本人に質問しながら正解を探っていく内容だ。
NHKのアナウンサーだった高橋圭三さんが初代司会者。ドラマの中に登場した八木治郎アナウンサーは2代目司会者で、高橋さんがNHKを退局してフリーになったことを受け、62年4月から務めていた。今回、演じたのは、同局で現在活躍中の近田雄一アナウンサーだ。
この場面では、ジョーが出演するサマーフェスティバルに行くことが「秘密」として描かれた。しかし、るいには、なぜ故郷を離れて大阪で暮らすことになったのかという、重大な秘密が存在する。視聴者としては、そのことにも思いが及ぶ場面でもあった。
松岡氏は「そこまで考えていただけるかもしれないが、それは、るいの妄想として見ていただくものではないと思った。あの場面は込み入った話にはしていない。当時の番組のリアルな世界に落とし込み過ぎないように、ほどよい距離感で映像化した方が良いと考えた」と説明する。
6日の放送では、ジョーらが、るいの真の秘密に向かい始める場面もあった。「私の秘密」の妄想場面は、そこへの導入の役割をユニークな形で果たしたと言えるだろう。
ドラマの中で実在の番組や物事などに触れると、物語に親近感を抱きやすい。昨年12月28日の放送で、るいがクリーニング店の客の春彦(風間俊介)と一緒に見に行った映画は黒澤明監督の「椿三十郎」(1962年1月公開)だった。るいと春彦が出てきた映画館の外に俳優の三船敏郎さんが演じた主人公の侍などが描かれた大看板が立てかけられており、オールドファンとしては心をくすぐられる映像になっていた。
今後も、懐かしい1960年代に思いをはせながら物語を楽しみたい。
◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。