谷川九段 王将戦を読む、連敗の渡辺王将へ“エール”送る 一局集中を
2022年01月29日 05:30
芸能
立会人として終局後の感想戦にも同席し、まだ優劣不明の分かれだったと判明したのが△8八歩に▲同金とせず、▲2三歩成とする攻め合いだった。
以下△同歩▲同角成に手抜きして△8九歩成に▲4五銀。その後、△同銀▲同桂△7九と。「その変化が実は際どかった。感想戦で具体策は見つからなかったが、先手に何かありそうでした」。そこで感じたのが渡辺の時間消費のチグハグさ。△8八歩の1手前、▲3四角になぜ20分しか使わなかったのかを疑問視する。
開幕局を落とした渡辺は、先手番の第2局に必勝態勢を敷いたはず。その重要局面、51手目を20分で指した。8時間の持ち時間は、1日目午後とはいえ2時間を消費したばかり。対して、これまで1日目から長考する傾向にあった藤井が1時間15分しか使っていなかったことが「藤井さんとの消費時間の差を意識しすぎた可能性はあります」と分析する。
回想するのが、自身にとっての羽生善治九段戦。同一カードとしては中原誠十六世名人と米長邦雄永世棋聖による187局に次ぐ歴代2位、168局を重ねた。対戦成績は谷川の62勝106敗。森内俊之九段の60勝(78敗)を抜き、羽生に最も勝った対戦相手だが、8歳下の羽生に抱いた感情は、18歳下の藤井に渡辺が抱く感情と共通点があるのか。
「苦手だったり負けが込む、強い相手にはどうしても喜びすぎたり、がっかりしたり。形勢や優劣には敏感に対応できないといけません。でもそれが感情の揺れにまでつながってはいけません」
同じ7番勝負の1991年王位戦。谷川は連敗発進から4連勝で防衛した経験を持つ。その第2局から第3局の間にあった第41期王将戦2次予選で同じ中田宏樹八段に勝ったことが転機だった。
「負かされているときは、相手が完璧だと思うもの。でも一局返すと、そうでもないのかな…と。気持ちの部分はあります」。渡辺にとってのさらに不利な条件は、第3局まで中5日の短さ。「いきなり4勝しようと思うと気が遠くなる。一局一局。第3局に専念することでしょうか」と打開策を提言した。(構成・筒崎 嘉一)