「カムカム」川栄李奈 異色の寝起き初登場 朝ドラ名作「おしん」との絡み合い
2022年02月10日 08:15
芸能
演出の橋爪紳一朗氏は「藤本有紀さんの台本にびっくりした。朝ドラのヒロインはきれいに出てくるのがセオリーだと思うが、ひなたは寝起きだった」と特異性を強調する。
この回は、父・錠一郎(オダギリジョー)らが朝食の時、茶の間のテレビで、1983年4月から放送されたNHK連続テレビ小説「おしん」の初回を見始める場面からスタートした。
橋爪氏は「藤本さんは『おしん』と絡めて描いている。『おしん』を見た錠一郎は『この朝ドラは凄い。15分近くヒロインが出てきいひんかった』と話すが、ひなたには、さりげなく出てもらおうという意図があって、あのような登場の仕方になった」と説明する。
あの場面で、ひなたは、るいに「あんたも高校3年生になるんでしょ!?」と注意されると「あっしにはかかわりのねえことでござんす」と一言。当時人気だった時代劇「木枯し紋次郎」の主人公の決めぜりふを連想させるせりふで、ひなたの幼少期を演じた子役の新津ちせも、1月31日放送の第63回の初登場の際に発していた。
橋爪氏は「あの場面に限らず、川栄さんは新津さんのものをご覧になっている。こちらからは『必要以上に意識することはない』とお伝えしてあり、変に寄せてはいない」と明かす。
後半に、BOROのヒット曲「大阪で生まれた女」(1979年発売)の替え歌を口ずさむ場面がある。川栄はアイドルグループ「AKB48」の元メンバーだが、2015年に卒業した後、歌声を聞かせるのは珍しい。
橋爪氏は「ある歌は、台本に書かれていたもの。事前に川栄さんに曲の音源をお渡しし、歌いたいように歌っていただいた」と話す。
初代の上白石萌音、2代目の深津絵里から受け継いだヒロインのバトン。高校3年生になる年ごろのひなたを演じる川栄は、躍動感に満ちている。
橋爪氏は「川栄さんとは、3、4年前に他の番組のオーディションで会っているが、その頃から器用だった。こちらが考えている以上のものを出してくれる人、予想以上のお芝居を見せてくれる人、なんでもこなす天才肌の人」と称賛する。
川栄は昨年、NHK大河ドラマ「青天を衝け」で徳川慶喜(草なぎ剛)の妻・美賀君を演じて強い存在感を放ったが、この朝ドラで、さらに強烈な光を発していくことになりそうだ。
◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。