「鎌倉殿の13人」義円役・成河 演劇に魅了された原点は“沈黙”初大河に刺激「もっとビックリしたい」
2022年03月20日 06:00
芸能
成河が今回演じる義円は、頼朝の異母弟で義経(菅田将暉)の同母兄。父・義朝が敗れた「平治の乱」(1160年)後に近江・園城寺へ入るが、兄の挙兵を聞き、京から駆け付ける。弓矢の名手にして、和歌にも通じる。
前回第10回(3月13日)で初登場。ラスト、八重(新垣結衣)に対する北条義時(小栗)の想いを知った頼朝が2人を取り結ぶと話していると、突如、若い僧が現れる。義円だった。
常陸の佐竹義政(平田広明)征伐の際に和田義盛(横田栄司)が捕まえた小鳥が入る鳥籠を手に取り「これはツグミでございますね。ヒヨドリに似ていますが、ツグミはさえずりません。口をつぐむ、からツグミと呼ばれているようです。兄上でございますね。お会いしとうございました。源義朝が八男、乙若でございます。今は義円と名乗っております」と頼朝にあいさつ。いかにも聡明に見える男は、物語に何をもたらすのか。
成河は音楽好きで、中学・高校とハードコアのロックバンド活動。「と言っても、学校の放課後に同級生とやるただのコピーバンドです(笑)。高校3年の時、たまたま舞台に詳しい友達がいて、引きずり込まれる形で演劇を始めることになりました」。一番最初に“体験”した作品は、演出家・蜷川幸雄氏との名コンビで知られた劇作家・清水邦夫氏のデビュー作「署名人」(1958年)。明治時代の国事犯官房の一室を舞台に、民権運動の憂国の志士2人と讒謗律(ざんぼうりつ=政府批判を規制するための言論統制令)に触れる新聞雑誌の署名や投獄を大金で肩代わりする“署名人”の男3人を軸にした密室劇。「ご覧になって何か感じたところは?」と尋ねると「いきなり演(や)ったんです、文化祭で。誘われるがままに」と“即俳優デビュー”だったことを明かした。
「高校生が好むような演目じゃないんですが、その友達が渋いチョイスをして演出もして。それまではバンドマンでジャカジャカ音を鳴らしていましたが、対極にある静寂や沈黙をこの密室劇で味わって、それに取りつかれた感じがありました。500人ぐらい入る講堂が満員になって、同級生や先生たちの前で演じた時の感覚が今も忘れられません」
そして、大学時代に東大内の演劇サークルで本格的に活動を始め、01年に劇団「ひょっとこ乱舞(現アマヤドリ)」の旗揚げに参加。02年には「北区つかこうへい劇団」に10期生として入団した。08年度の文化庁芸術祭・演劇部門新人賞。11年には第18回(10年度)読売演劇大賞・優秀男優賞(「BLUE/ORANGE」および「春琴」の演技により)に輝くなど、数々の作品を彩ってきた。昨年21年も「イリュージョニスト」「子午線の祀り」「スリル・ミー」「森 フォレ」「検察側の証人」「ローマ帝国の三島由紀夫(リーディング公演)」と舞台に立ち続けた。
「大学の頃に劇団を立ち上げて、アルバイトをしながら自分でお金を捻出して公演を打っていたので、僕の場合、最初から“仕事感”がないんです。“仕事をしている感じ”がないのは、今も基本的には変わりませんね」
昨年3月、節目の40歳を迎えた。「俳優としてセカンドステージに入る」と自らも見据えていたところ、今回の大河デビューが舞い込んだ。剃髪の特殊メークの精工さや義経役の菅田らとの共演に触発され「今回あらためて実感したのは、まだ自分の知らないこと、まだ出会っていない人や感性が、たくさんあるということです。決して目や耳を閉じることなく、もっと色々な人に出会って、ビックリさせられたいと思いました。ビックリさせる側じゃなく、僕自身がもっとビックリしたい。映像の作品も、やればやるほど面白いと再認識したので、ご縁を大切に、またチャンスを頂けた時は全力で取り組みたいと思っています」
2~3月の「冒険者たち~JOURNEY TO THE WEST~」を終え、4~5月にミュージカル「EDGES―エッジズ―2022」(東京・有楽町よみうりホール、大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール)、7月にジャンル・クロス2「導かれるように間違う」(彩の国さいたま芸術劇場)、9月にミュージカル「COLOR」(東京・新国立劇場小劇場)と今年も舞台が目白押し。主戦場はもちろん、ドラマや映画でも一層、見る者を驚かすに違いない。
=おわり=