「カムカム」上白石萌音 再登場の舞台裏
2022年04月07日 08:15
芸能
第111回で上白石の安子の場面は2つ。いずれも安子が若い頃で、一つは、雉真家の扉を開けたるい(子役の古川凛)と対面する場面、もう一つは米・シアトルでロバート(村雨辰剛)と暮らす場面だ。
制作統括の堀之内礼二郎氏は「昨年、上白石さんが自分のシーンを全て撮り終えた時に『最終盤の方で何かお願いしたいので、スケジュールをください』という話をさせていただいていた。ただ、それがどんなシーンなのか、その時はまだ決まっていなかった」と明かす。
演出の安達もじり氏は「上白石さんの新たなシーンは、全体のクランクアップの数日前に撮った。米国に渡ってからのロバートとのシーンから撮ったが、上白石さんは現場に入った瞬間、涙ぐむくらいにうれしそうな様子だった。以前の撮影から半年以上たっていたので、上白石さんは安子になれるか不安そうだったが、完璧に安子になっていたので、思った通りに『完璧です』と伝えると、安心していた」と話す。
特に、強い印象を残すのは、雉真家の扉を開けたるいと対面する場面。第38回で、雨の中、るいが額の傷を見せ、「アイ・ヘイト・ユー(大嫌い)」と言った場面と同じ構図だが、今回は、晴天のもと、るいが笑顔を見せ、涙ながらに抱き合う。
安達氏は「天気に関しては、藤本有紀さんの台本に何も書かれていなかった。どちらにしたら良いか、ぎりぎりまで悩んだが、私には、晴れていてほしいという思いがあった。後ろの方にチラッと映っているが、木々がぬれていて、雨上がりの設定になっている」と説明する。
堀之内氏は「台本で読んだ時から、ゾクゾクした。藤本さんはよくこんなシーンを書いたな…と思った。上白石さんの安子は悲しい終わり方になっていたので、個人的に残念な気持ちがあったが、上白石さんがあのシーンを演じてくれたおかげで救われた。視聴者の方々も、森山さんの安子ではなく、上白石さんの安子があのように、もう一度、るいと抱き合えたことで、欠けていたピースが見つかり、埋めてほしかった穴が埋まった感じになったのではないだろうか。あのシーンにはカタルシスがある」と話す。
安達氏は「上白石さんの2シーンを撮り終えた時、深津絵里さんと川栄李奈さんが来て、ヒロイン3人が現場でそろう貴重な1日になった。上白石さんは全て撮り終えた後も、名残惜しそうな様子だった」と語った。
いよいよ、8日が最終回(第112回)。どんな結末を迎えるのか…?楽しみがさらにふくらむ第111回となった。
◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。