「プロフェッショナル」小栗旬は“あまのじゃく”番組D「取材拒否覚悟」の密着「流儀なんてない」に困惑も
2022年05月03日 07:00
芸能
「撮られたくないものはない。聞かれたくない質問もない」。2020年12月にスタートした取材の初日、小栗はこう言い放った。その言葉通り、稽古場から移動の車中までカメラをすべて受け入れた。
予告動画には「小栗旬という役者は、この数年で死ぬんだよ」「一度もいい芝居なんかしてない、人生生きてきて」などと、スター俳優らしからぬ言葉が並ぶ。「(今の小栗旬を撮っても)おもしろくないよ」「自分がないんだよ、たぶん」。弱音を吐き、はぐらかし続ける日々。NGなしの真剣勝負。長期密着の末、最後の最後に見つけた小栗の流儀とは…。39歳、知られざる等身大の素顔に迫る。
――今回、小栗さんに密着することになった企画の経緯について教えてください。
末次徹チーフ・プロデューサー(CP)「密着が決まったのは2020年の秋です。翌々年の大河ドラマが脚本・三谷幸喜さん、主演・小栗さんの『鎌倉殿の13人』に決まったと聞いて『これは絶対に話題作になる』と考え、ドラマの制作統括・清水拓哉チーフ・プロデューサーの協力を得てオファーしました。小栗さんからは『年上のディレクターさんの方がいい』というご要望がありましたが、和田ディレクターにお願いしました。小栗さんより年下だったので、賭けでしたが。決め手は直感です。これまで吉本新喜劇座長の小籔千豊さんや美容師の高木琢也さんら一癖も二癖もある方たちを相手に、一歩も引かず名作に仕上げてきたこと。そして何より、酒とタバコが好きなこと。『小栗さんと相性がいいのでは?』と思いました」
和田ディレクター(D)「末次CPから打診があり、受諾しました。32歳の私にとって小栗さんは、私の青春時代に一気にスターダムにのし上がった方。『花より男子』(TBS、05年10月期)が放送された翌日はクラスメートの女性陣が教室で『花沢類、カッコいい』と叫び、男性陣は映画『クローズZERO』(07年10月公開)の滝谷源治に憧れて学生服は小さめの上着に太いズボンを着るのが流行るというド真ん中世代。そんな青春時代からのスターを自分がどう表現すればいいのか、楽しみというより緊張の方が何倍も上回っていたのが事実です。取材初日の前日、本当に一睡もできなかったことを思い出します」
――今回、小栗さんに密着するにあたり、最も心掛けた点は何ですか?
和田D「『人間・小栗旬の“髄”に迫るにはどうしたらいいか』にすべてを注力しました。数多の俳優さんが、メディアのインタビューやトークの中で小栗さんにまつわるエピソードを挙げます。『なぜ、この人はこんなに愛されているのか?』『なぜ、この人の周りに人が集まるのか?』。その答えが分かれば、小栗旬の真の『流儀』が見えてくるのではないかと考え、密着しました。小栗さんは、自他ともに認める“あまのじゃく”。そして、非常にシャイな方。私があらかじめ答えを想定してインタビューをすると、それを察し『大したことは何も考えてない』と、すぐにはぐらかします。なので、質問を投げかけるというより、日々『私は取材をしていて、こう感じた』『小栗さんが大切にしていることは、これなんじゃないか』と自分の感想を淡々とつぶやきました。すると、小栗さんも一緒になって考えてくれる。その繰り返しを、ありのまま撮影し、番組にしました」
――最も大変だった点は何ですか?
和田D「取材初日から小栗さんに『流儀なんて一つもないよ』と言われて、面食らいました。『仕事の流儀』をドキュメントして伝える番組なのに『流儀なんてない』『こだわりもない』と半年間にわたって繰り返し言われました。本当に困りました。しかし、私自身は『何の努力もせず、何のこだわりもなく、第一線で活躍し続けられるわけはない』と考え、取材拒否を覚悟で小栗さんに食らいつきました。すると、本当に取材の最後に仕事に対する胸の内を語ってくれました。何を語ったかは是非、番組をご覧いただきたいです」
◇和田 侑平(わだ・ゆうへい)2013年入局。初任の福岡局を経て、宮崎局時代に制作した「鮮魚店店主」で「プロフェッショナル」デビュー。17年の異動でプロフェッショナル班に加入。「美容師・高木琢也」「新喜劇座長・小籔千豊」「料理人・米田肇」など話題作を連発している。
=書面インタビュー(中)に続く=