鶴、カナリア、そしてバードストライク…鳥尽くし?の出張
2022年07月09日 15:50
芸能
小学校分校のセットがそのまま残る礼文町香深の「北のカナリア・パーク」が会場。映画公開翌年の2013年7月25日にオープンし、立派に観光の目玉になっている。小野徹町長をはじめ島民約300人が温かくゲストを迎え、行き届いた保存と管理に吉永も「役者冥利(みょうり)に尽きる」としみじみ語った。
気温17度。濃霧注意報が出る、あいにくの天気。利尻富士も望めなかったが、稚内から駆けつけた子供合唱団「エンジェルボイス」が歌で盛り上げるなど、歓迎セレモニーは和やかに進行。松原もお返しに「あなたに逢えて」と「最北シネマ」の2曲を披露。美声を響かせた。
「北のカナリアたち」は湊かなえさんの短編集「往復書簡」の中の「二十年後の宿題」が原案。かつて離島で小学校教諭をしていた主人公「川島はる」が、教え子の1人が起こした事件を機に20年ぶりに島を訪れる展開で、生徒達の合唱が物語に彩りとアクセントを与えた。
小笠原弘晃(20、森山未來の子供時代)=以下同、、渡辺真帆(21、満島ひかり)、相良飛鷹(22、勝地涼)、飯田汐音(20、宮崎あおい)、佐藤純美音(22、小池栄子)、菊池銀河(19、松田龍平)の6人は、オープン式典以来9年ぶりの礼文島訪問。当時、裏から撮影を支えたり、エキストラ出演した町民らから「大きくなったねえ」と声をかけられて照れ臭そうにしていた。
専門学校で演技と歌を勉強中の渡辺は「この作品に携わさせて頂いたことが原点」と話したが、くしくも6人とも芸能の道を歩み始めている。「はる先生」と呼ばれている吉永は「大変なことを分かってるのかな?とも思いますが、好きなことをやるのはいいこと。アドバイスは出来ないけれども、見守っていきたい」と“教師”の目でエールを送った。
6人の生徒達とは、毎年夏休みに吉永が音頭を取って“同窓会”を開いてきたという。水族館に行ったり、東京湾をクルーズしたり…。コロナの影響で昨年は中止を余儀なくされ、思い出のロケ地での2年ぶりの開催に全員が感無量の様子。吉永が阪本監督に向かい「私たちを使って映画を作ってください。“サウンド・オブ・ミュージック”のように、歌のある、音楽のある映画が出来たら最高。みんながどのくらい成長したかも分かるし」とリクエスト。最初は「う~ん」とうなっていた阪本監督も「みんなと映画を作るなら……うん、題名だけ考えました。“北のカナリアども”」と返して笑いを誘った。
感謝の集いに出席した東映の多田憲之会長が「北のカナリア」製作に至る秘話を打ち明けた。20年11月18日に亡くなった岡田裕介前会長(享年71)は実は鶴の映画を構想していたという。「鶴を餌付けして絶滅しそうになったのを防いだ女性の話。誘われて2人で釧路湿原まで調査に出掛けました」と述べた。結局この企画は実を結ばなかったが、鶴からバトンを受けたのがカナリアたちの羽ばたきだった。
鳥にまつわる話で、このコラムを締めよう。取材を終えて2日中に礼文島から稚内にフェリーで戻り、翌3日に稚内空港からの羽田便に搭乗する予定だった。ところが、その搭乗予定機がトラブルに見舞われた。羽田から稚内空港に到着する際、エンジンが鳥を巻き込んでしまった。いわゆるバードストライク(鳥衝突)というアクシデント。こんなケースで足止めを食ったのは初めてだ。運良く後続便でその日のうちに帰京出来たが、鳥に始まり、鳥に終わった2泊3日の出張だった。