藤井王位 豊島九段との第3局に勝利し2勝1敗、二十代初戦飾る 割に合わない飛車歩交換も華麗な決め手
2022年07月21日 19:37
芸能
藤井は長く自陣に控えたままだった飛車を稼働させ、豊島のと金を取った。そのと金には、馬などのひもが付いていたため、割に合わない飛車歩交換となったが「一歩千金」とはこのことだ。寄せのレールに乗せて4手後、豊島を投了へ追い込んだ。
「経験の少ない形になって序盤から難しい展開にしたかと思った」
戦型は3局連続の角換わり腰掛け銀。銀桂交換の駒得ながら封じ手時点の形勢判断は「手が分からず、苦しいのかなと」。自陣へ馬、成桂、と金に進入されたため、新たな攻め駒を与えないよう歩や桂馬の小駒で攻めをつなぎ、優勢を築いた。
19日に20歳の誕生日を迎え、その初対局を自ら飾った。二十代になって抱いたのは喜びより自覚。「過去の棋士をみると20代半ばまでに活躍された方が多く、自分にとっても大事」。いわば最年少5冠の達成感より、焦燥感だろうか。96年、当時の全7冠を25歳で独占した羽生善治九段(51)らを念頭に、現状に甘んじない意欲を語った。
13、14日に札幌市で第2局、17日に名古屋市で永瀬拓矢王座(29)との棋聖戦第4局に続く、「中2日、中2日」のタイトル戦に3連勝。全8冠中、過半数超えの5冠だからこその過密日程を乗り越えた。
藤井には昨年8月18、19日に王位戦第4局、22日に叡王戦第4局、さらに24、25日に王位戦第5局を指した例があり、「中2日、中1日」の勝敗は○●○だった。「将棋は体力」。藤井の大師匠・板谷進九段の信条を孫弟子が体現した。勝率上は若干先手が有利なことからテニスになぞらえられる将棋。今期先手が勝利し合って迎えた第3局、後手の藤井が今期初のブレイクに成功し、一歩抜け出した。
○…豊島の気迫が見えた気がした。2日目午前11時ごろから長考に入り、1時間の昼食休憩を挟んで59手目を指したのは午後2時53分。2日制8時間の記録上は3時間3分の考慮だが、うな重膳に箸をのばしながら、実質4時間考えた。この角成について「勝負できる順がなくて、角を成るしか仕方なかった」。先手番を落としたが。第4局へ向け「しっかり準備して頑張りたい」と語った。